球体とリズムBACK NUMBER
イニエスタ今季初得点は魔法みたい。
ビジャとお辞儀、日本での順応ぶり。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/06/20 11:50
不振にあえいでいた神戸が首位・FC東京を撃破。その主役はやはりイニエスタだった。
あの瞳にしか見えないコースが。
このように光景を描写すると、いかにもシンプルなプレーの連続だったような気がしてくる。いや、実際に記者席からでは、ドリブルにもシュートにも派手なところはなかったように見えた。そこにイニエスタの凄みがあると思う。
その後に映像で確認すると、シュートを打つ直前までクロスを匂わせていたことがわかる。
GK林彰洋のステップは逆に踏まれているし、そうでなければ、狭い方のニアサイドにボールは通らなかったはずだ。むろん、そこを射抜くキックの精度も極めて高い。
ただし──。あのドリブルは、なぜいつも誰にも止められないのか。それについて、説明できる人はあまりいないだろう。相手の重心や次の動きが手に取るようにわかるのか、それともその優しい瞳の先には彼にしか見えないコースがあるのか。イニエスタが魔術師と呼ばれる所以のひとつだ。
「ピッチ上でのフィーリングも……」
「アンドレスはこのチームのベストプレーヤーだ。見事なゴールだったね。彼が戻ってきて、チームに安心感とクオリティーをもたらしてくれている」とビジャは古くから知る同僚をたたえた。「FC東京はディフェンスに長所があり、首位に立つだけの力を持ったチーム。だから、落ち着いて忍耐力を持ってしっかりボールを回すことを心がけた。そんな相手のホームで勝てて、とてもハッピーだよ」
その後、久しぶりにJリーグの試合後のミックスゾーンに姿を現したイニエスタは、次のように話した。
「ゴールは勝ち点につながったという意味で、素晴らしいものだった。チームが勝利を必要としていたし、首位チームに勝つことの重要さもわかっているので、本当に嬉しい。(離脱期間中は)やるせない気持ちでいっぱいだった。
コンディションが万全ではない状態で試合に出て、怪我を悪化させてしまって。それは失敗だった。今日はもともと90分出場する予定ではなかったけれど、ピッチ上でのフィーリングもよかった。良い形で試合を終えられたね」