スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
J・ヒックスとJ・ヘイダー。
MLBで最も打ちにくい魔球使いは誰?
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byAFLO
posted2019/06/08 09:00
4月8日、ロサンゼルス・ドジャース戦に登板したジョーダン・ヒックス。
104マイルのツーシームを連発。
ここでしょっちゅう取り上げられているのが、ジョーダン・ヒックス(カーディナルス)の映像だ。
アロルディス・チャップマン(ヤンキース)が以前ほどの球速を誇れなくなったいま、この右腕は大リーグ最速のフォーシームを投げる。
有名なのは'18年5月に測定された時速105.1マイル(169キロ)だが、今年に入ってからも104マイルのツーシームを連発して、観客の度肝を抜いている。
なにしろ、投げる球の47パーセントが100マイル超えというのだから恐れ入る。年齢も22歳。これで投球術を身につければ、カーディナルスの抑えは、当分彼に任せきりでよいだろう。
意外と難攻不落でもない不思議。
では、ヒックスの剛球は難攻不落なのか、というとそうでもない。
2018年、73試合に登板して77回3分の2を投げた彼の成績は、3勝4敗6セーヴ、防御率3.59だった。今季は6月2日現在、22試合に登板して20回3分の1を投げ、2勝2敗11セーヴ、防御率3.98。意外なほどに自責点が多い。
理由のひとつは、シーズン序盤の好調が維持できなくなっていることだ。'19年4月末までのヒックスは13試合に投げて防御率2.13。奪三振16に対して与四球5と、内容も充実していた。
それが5月以降で見ると、9試合の防御率が7.04。三振と四球の割合も8対6と芳しくない。春先、彼の剛球に眼をくらまされていた打者が、そのスピードにだんだん慣れてきたのだろう。
それと、球にスピンが足りない。力で抑え込もうとして、棒球が増えているのも懸念材料だ。逸材であることはまちがいないのだから、速球の回転数を上げ、投球術を身につけてひとまわり大きくなってほしい。