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平成最後の「山の神」がさらに進化。
国学院大・浦野雄平は平地でも強い。
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byTakashi Okui
posted2019/06/07 11:30
2019年新春の箱根駅伝5区で疾走した浦野雄平。オールラウンダーとして磨きをかけている。
東洋大・相澤に対抗心を燃やす。
それでも、本人は満足していない。圧倒的な強さを見せた浦野が意識するのは、今年の箱根で4区の区間新を叩き出した東洋大の相澤晃(4年)だ。
「(相澤は)いま学生トップと言われているけど、僕はチャレンジするというより、対等に勝負して、勝ちたいと思っている」
今大会は同じレースで走ることはなかったが、浦野は対抗心をめらめらと燃やす。日本学生ハーフではレース終盤、相澤に圧巻の強さを見せつけられた。ライバルが優勝して喜んでいるなか、顔をゆがめて5位でフィニッシュ。目標にしていたユニバーシアードの代表権(3位以内)まで逃し、悔しさを募らせた。
「さすがにあのときは気持ちが落ちてしまったが、自分の力が足りなかったんだ、と素直に受け止めるようにした。気持ちを切り替え、トラックで結果を出すことに力を注いでいる」
箱根の後は走りのバランスを崩した。慣れない山で疲弊した影響は大きく、小さな故障を抱えて、その後も調子が思うように上がらなかったが、4月以降、ようやく充実した練習を積めるようになってきた。
山だけにとどまらない多芸多能。
前田監督と話し合い、目的にあったトレーニングに取り組んでいる。ときには衝突もしたが、いまは浦野の意見を取り入れてもらい、全体練習のほかに個別メニューで高いレベルを追い求めている。
今冬には、MGC(マラソングランドチャンピオンシップシリーズ)の出場権を持つ富士通の中村匠吾らとアメリカ・ニューメキシコ州のアルバカーキで高地合宿を行い、「練習に取り組む姿勢。意識の高さを学んだ」と、刺激を受けたのも大きい。
トラックシーズンの目標設定値は高い。自己ベストの更新だけではなく、10000mは28分15秒、5000mは13分40秒を狙う。いずれも日本選手権の参加標準記録をクリアするものだ。
箱根の5区で一躍、脚光を浴びたものの、浦野は決して山のスペシャリストではない。前田監督は、多芸多能なランナーだという。'18年1月の箱根では1区で区間2位と好走し、同年4月の世界大学クロスカントリー選手権では6位入賞を果たしている。