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大坂なおみが元女王をねじ伏せた。
2時間50分の熱戦に喝采は止まず。 

text by

山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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photograph byAFLO

posted2019/05/31 18:00

大坂なおみが元女王をねじ伏せた。2時間50分の熱戦に喝采は止まず。<Number Web> photograph by AFLO

アザレンカ(左)の出来も素晴らしかった。しかしそれ以上に大坂なおみの充実ぶりが目立った2時間50分だった。

「アグレッシブにプレーしないと」

 すぐれたコートカバーリングは2歳半の子を持つ母親のイメージとかけ離れ、ライン際やネットすれすれのショットを放つ攻撃力に、頭脳的な展開力もある。この2カ月の間にトップ10からの勝利が3度あり、約3年ぶりのツアー決勝進出も果たした。

 自信が芽生える中、対峙するのが若き女王だったということは、そのパフォーマンスと無関係ではなかっただろう。

 大坂は第1セットを奪われ、第2セットでも第5ゲームでブレークを許した。さらに第7ゲームで2度目のブレークを喫するピンチを迎えたが、これをしのいで大逆転勝ちへの布石を敷いた。

「私が後ろに下がると、彼女が思い通りに主導権を握ってしまう。だから、もっとアグレッシブにプレーしないといけないと思った。それはこれから挽回しないといかない状況では難しいことだった」

パワーと意志が元女王を怯ませた。

 もうゲームを落とせない状況で、この日のようなアザレンカに対してリスクをとってプレーすることは勇気がいる。チャレンジャー精神は持てても、女王が「一か八か」や「負けてもともと」の心持ちでプレーするわけにはいけないのだ。

 大坂は成功への決意を込めて実行し、前へ前へと詰めて畳み掛けるように豪快なスイングボレーやスマッシュ、グランドスマッシュなどを炸裂させた。

 その身体的なパワーと意志の力が、元女王をやや怯ませただろうか。第8ゲームで5度のデュースの末に大坂がブレークバック。アザレンカは最後のポイントを含めて2度ダブルフォルトをおかした。いったん追いついてからの大坂はショットの攻撃力と精度をより高めていった。

「ビカ(アザレンカ)はウィナーが打てる。あんなにたくさんのウィナーを決める選手はほかにいない」と大坂は言ったが、試合を通したウィナーの数はアザレンカの35本に対して大坂が52本。とにかく、女子の試合としてはずば抜けてスリリングなウィナー合戦だった。いつの間にかほぼ埋まったスタンドからの喝采を浴びながら、2時間50分の勝負を制した。

【次ページ】 「間違いなく新しい時代の選手」

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大坂なおみ
ビクトリア・アザレンカ

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