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資本主義でアヤックスは縛れない。
欧州の異端児はなぜCLで輝いたか。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2019/05/21 07:00

資本主義でアヤックスは縛れない。欧州の異端児はなぜCLで輝いたか。<Number Web> photograph by AFLO

アヤックスだけが、全く異質の違うゲームをしていた。ビッグクラブは彼らに確実に恐怖を感じたことだろう。

リードし、追いつかれ、刺し違える覚悟で。

 実際、敵地ロンドンでの1stレグを1-0で先勝し、ホームでの2戦目も前半終了までに主将デリフトとMFツィエクのゴールで2-0とリード。トータルスコアを3-0としたのだから、大会経験の浅い監督テンハーフと選手たちが一息ついたとしても仕方ない。

 しかし、トッテナムの指揮官ポチェッティーノは後半開始とともにターゲット役のFWジョレンテを投入し、ゲームバランスを崩しながら逆転への望みを捨てなかった。

 アヤックスは見えてきたファイナルの幻に浮足立ち、守勢に回った。ボールを持てなくなった彼らは、トッテナムと刺し違える覚悟でカウンターの撃ち合いを選んだ。

 それはプレーひとつひとつが決定機に直結する、見ているだけで寿命が縮まりそうなスリリング極まりないゲームだった。

 スパーズのFWルーカスから立て続けにゴールを決められ、2-2とされた後も、アヤックスの選手たちにドローのまま凌ぐという考えは毛頭なかった。

 後半アディショナルタイムの数秒を削ることに人生を捧げてきたユベントスの主将キエッリーニにしてみれば、まったく理解に苦しむ価値観だろう。

 そして、残り30秒もなかったはずの96分目に、アヤックスはカウンターから3失点目を喫した。

 CL決勝進出の夢が砕け散った瞬間、白と赤のユニフォームが、まるで見えないところから砲撃を受けたようにその場にバタバタと倒れていった。

若き才能は移籍金を残してチームを去る。

 欧州にも「目標はアヤックス」と口にするクラブは数多い。

 今季のアヤックスには、ともに21歳のMFデヨングとMFファンデベーク、19歳の主将DFデリフトといった将来有望なタレントたちが揃った。最高の当たり年というやつだ。

 小さい頃、少年サッカー大会の表彰トロフィーを家族にも隠したほど恥ずかしがり屋だったデヨングは今年の夏、総額8600万ユーロでバルセロナに移籍することが決まっている。

 残りの2人だけでなく、今季メンバーの多くが早晩5大リーグのビッグクラブへ出世していくだろう。アヤックスは過去5年間で8800万ユーロもの利益を計上している。

【次ページ】 資本主義の常識で、アヤックスは縛れない。

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