ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
井上尚弥が戦う「過去最強の相手」。
70秒KOから一転、技術戦の可能性?
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byREUTERS/AFLO
posted2019/05/17 17:00
「事実上の決勝」と騒がれる一戦を前に、会見で睨みを利かせる両者。井上尚弥(左)同様、エマヌエル・ロドリゲスもいまだ無敗。
中盤以降も焦りは禁物。
直近の2試合が本人の言うように「出来すぎだった」と仮定し、ロドリゲスの力量を「井上に近いレベル」と想定してみると、井上は慎重に立ち上がるに違いない。ジャブをていねいに突きながら距離を測り、フェイントをかけ、ボディにパンチを散らしながらタイミングを読む。
そんな息詰まる攻防が初回から繰り広げられるのではないだろうか。
中盤以降も焦りは禁物だ。ロドリゲスに少しずつダメージを与え、決定的なリードを奪わない限り、無理してノックアウトは狙わない。最も大事なのは欲を出さずに勝利に徹することだ。そのままノックダウンのシーンはなく、大差の判定でゴールテープを切るのも悪くない。
玄人好みの技術戦に?
もちろんパワーで勝る井上が中盤に、終盤に、場合によっては序盤に爆発するケースも十分に考えられる。
おそらくロドリゲスは井上ほどの強打者と対戦したことはないはずだ。序盤に1発いいのをもらい、それがたとえガードの上からであっても、井上のパンチに怖気づくようなことがあれば試合は一気に片がつく。モンスターの本能がたちまち反応し、ロドリゲスを飲み込んでしまうことになるだろう。
短時間で豪快なKOはもちろん悪くないのだが、玄人好みのフルラウンドの技術戦もまたボクシングの醍醐味だ。ロドリゲスとの一戦は後者の展開になる可能性を大いに秘めている。
歴史にその名を刻むようなバンタム級最高峰のファイトを期待したい。