ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
黒田雅之の6年間は世界に届かず。
選手も会長も燃え尽きた後楽園の夜。
posted2019/05/14 11:30
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
IBF世界フライ級タイトルマッチが13日、東京・後楽園ホールで行われ、挑戦者4位の黒田雅之(川崎新田)は王者のモルティ・ムザラネ(南アフリカ)に0-3判定負け。6年3カ月ぶり2度目の世界挑戦はまたしても実らなかった。
悪くない立ち上がりだった。黒田は初回から積極的に手を出し、左右の強打を打ち込んでいった。36歳のベテラン王者はガードの固さが特徴的だが、その上からお構いなしに打ち、左ボディブローはしっかりとわき腹をとらえた。
のちに分かったことだが、4回までのスコアは2人が黒田のリード、1人がイーブンにつけていたから、やはり序盤戦は悪くなかったのである。
しかし実際の採点とは裏腹に、黒田は少しずつ、そして着実に追い込まれていた。
「(ムザラネの)ジャブは伸びがあって拳1個分くらい伸びてくる感じ。2ラウンドくらいから右目が見えづらくなって距離感がおかしくなった」(黒田)
黒田はジャブを浴び始めると、たちまち右目が腫れだし、ムザラネがペースアップした5回には右ストレートも被弾し始めて劣勢に陥ってしまう。6回に右を決めて王者にダメージを与えたものの、中盤からはムザラネのパンチを浴び続けた。
6年ぶりの世界挑戦、デビューは2005年。
左ボディブローだけは返し続け、11回に再び右でチャンピオンの足をフラつかせたがそれまで。最終スコアは116-112、116-112、117-111。黒田の腫れあがった痛々しい顔が試合の内容を物語っていた。
32歳にして6年ぶり2度目の世界挑戦。6年前は「地に足がついていなかった」という男が今回の試合前は「怖いくらいに落ち着いている」と口にした。この6年で確かに成長はあったのだろう。
デビューは2005年だからもう14年前の話だ。軽量級離れした体格とパンチ力を武器に、翌年の新人王戦でKOを量産。決勝にあたる全日本新人王決定戦で初回KO勝ちを飾り大会MVPに輝いた。