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テコンドー界のヒロイン山田美諭。
“蹴りのボクシング”で狙う「金」。
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byKoji Fuse
posted2019/05/15 10:30
3年連続8度目となる全日本選手権優勝を飾り、笑顔を見せた山田美諭。
3歳から正拳突き、生粋の格闘家。
しかし、舞台が海外になると話は別。現在、山田は世界ランキング26位で、小池ナショナルコーチは強豪がひしめく階級だと説明し始めた。
「世界ランキング1位のパニパック(タイ)、ランキングは下(20位)だけど経験値の高いウ・ジンユ(中国)、アジア大会準決勝で山田を破ったマンノポア(ウズベキスタン)の成長も脅威。そのほかクリスチナ(ウクライナ)、アドカロア(アゼルバイジャン)、レイス(ブラジル)にも注意が必要でしょう」
山田は愛くるしいルックスで注目を集めるが、その素顔はフルコンタクト空手の道場を運営する父に背中を押されるように3歳から正拳突きをしていたという生粋の格闘家だ。中学の時、空手より階級区分が細かいテコンドーに転向し頭角を現した。そうしたキャリアに培われたのだろう。彼女の体幹は見た目以上にしっかりしているといわれている。
ケガで棒に振ったリオ五輪。
それでも、山田は海外の選手と対峙すると幾度となく弾き返されたと証言する。
「基本的に海外の選手は当たりやフィジカルがすごく強い。だからこそ、ぶつかったあとにも自分の攻撃をつなげられるように、腰にチューブをつけて蹴る練習をしたりしています。ぶつかったあとでも蹴れないと意味はない」
昨年のアジア大会まで、国際大会での結果がなかなか出なかっただけではない。リオデジャネイロオリンピックの最終選考会では右ヒザじん帯を損傷するなどの大ケガを負い、期待されていたオリンピック初出場を棒に振ったことも山田のメンタルをさらに強くした。
「ケガをした直後には、テコンドーを辞めようと思っていた時期もあります。自分もリオに出ると思っていたので悔しくて悔しくて……。だから復活したら、絶対活躍してやると心に誓いました」