ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
DeNA投手陣の救世主候補は19歳。
阪口皓亮のピッチングは“風”だ。
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKyodo News
posted2019/05/13 07:00
阪口晧亮は1999年8月15日、大阪府生まれの19歳。北海高から2018年にドラフト3位で入団した有望株だ。
「自分の長所は真っ直ぐで押すこと」
そんな阪口に一軍から声がかかったのは4月28日、鎌ケ谷スタジアムで行われた日ハムとの試合でのことだ。先発した阪口は3回無失点で予定よりも早くマウンドを降りると、二軍の大家友和ピッチングコーチから「上に行くぞ」と告げられた。
「キャンプでは一軍スタートしたにも関わらず不甲斐ないピッチングでファームにいることになったので、やっとチャンスがまわってきたと思いました。嬉しいという気持ちの一方、生き残りをかけた登板。結果を出さなければいけないと自然と気合が入りました」
4月30日の横浜スタジアムには一軍に帯同しリラックスして体を動かす阪口の姿があった。
緊張の初登板前、阪口は自問自答した。
「自分の持っている長所はどこだろうと考えたとき思ったのは、やはり真っ直ぐで押すこと。制球だけがすべてではない。持っているものをすべて出そう」
快投を呼んだキャッチャー伊藤の言葉。
ファームではすべてをキャッチャーに任せることなく自ら配球などを吟味し、自信のあるボールで勝負をしたいと思っていた阪口だったが、こと初登板に関してはバッテリーを組んだ伊藤光にすべてを任せた。
「経験豊富な光さんのリードを信じれば1番いいピッチングができると思いました。まあ、首を振る余裕がなかったのが正直なところですが、ここでこういう球を投げたいなと思ったときに光さんがそのサインを出してくれたり、気持ちが通じていたのかなって」
登板前に伊藤に言われたのは「腕を振り抜け」ということだけ。
「決して緩めず、全部真っ直ぐと同じように腕を振り抜け。ボールになってもいい。フォアボールを気にせず来てくれ」
この伊藤の言葉は阪口に勇気を与え、抜群の制球を披露することで快投につながった。
ハイライトは1-0でリードしていた5回裏、2アウト、ランナー三塁で連続試合安打を継続していた好調の近本光司を迎えた場面だ。初球のストレートが高めに入りボールを取られると、2球目は内角高めへ146kmのストレートを腕を振り投げ込んだ。真っ直ぐ押しの力のピッチング。近本が打ち損じレフトフライに倒れると、阪口はマウンド上で体の奥底から振り絞るような雄叫びを上げた。
「すごい応援のアウェイのなかで調子のいい近本さんとの対戦は、正直に言えばすごく怖かったんです。そこを抑えることができてのガッツポーズでした」