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Vリーグ連覇に貢献、次は代表で。
“8時半の女”石井優希は強くなった。 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byNaoki Morita/AFLO SPORT

posted2019/05/08 15:00

Vリーグ連覇に貢献、次は代表で。“8時半の女”石井優希は強くなった。<Number Web> photograph by Naoki Morita/AFLO SPORT

久光製薬の連覇に貢献した石井優希。東京五輪に向け、確かな「自信」を得た。

同期・長岡望悠の存在。

 世界選手権後の疲労が抜けないままVリーグを迎えたことも不調を招いた一因だったが、もう1つ、自分がやらなきゃ、と過剰に背負いすぎた理由がある。

「(長岡)望悠のことも大きかったです。私にとって、望悠は本当に大きな存在なので」

 同じ歳で久光製薬の同期。ほぼ同時期にレギュラーの座をつかみ、日本代表に選ばれた。共にリオ五輪へ出場し、「次は(もう1人の同期の野本)梨佳と3人でオリンピックに出場しよう」と誓い合ってきた。

 だが、長岡は'17年の試合中に負傷し、診断結果は左膝前十字靭帯損傷で手術を敢行。リハビリを経て昨年日本代表に復帰、イタリアセリエAのイモコに移籍したが、昨年12月に再び同じケガに見舞われ、帰国、手術を余儀なくされた。

 日本代表としてコートに立つべくリハビリに励む仲間のためにも自分が逞しくならねば。気づかぬうちに石井は自分で自分にプレッシャーをかけていた。

「エースは望悠で、負けたくないという思いはあったけれど、でもそれ以上に自分が苦しい時や決まらない時に後衛からも助けてくれたのが望悠でした。だから望悠が今までどれだけボールが集まっても決めて来たように、私もそうならなきゃ、って」

苦しんだ末に気付いたこと。

 まだ足りない。まだダメだ。長岡と比べてばかりいたせいか、できないことばかりに目が向いていた。だが、それではいつまでも変われない。ファイナルステージに突入し、緊張感を伴う試合が増えた頃、大切な根本にようやく気付いた。

「苦しい、で終わるのではなく、楽しもう、と思えたんです。だから、まだまだ全然頼りないですけど、どれだけ苦しくても逃げるのは辞めよう、って思いました」

 レギュラーラウンド、ファイナルステージを1位で終え、連覇をかけ迎えたファイナル。ファイナル8を0ポイントから勝ち上がり、決勝へコマを進めた東レが大逆転勝利を狙う中、石井は冷静だった。

 最初が肝心だと思っていた、という第1セットの立ち上がり。石井の得意なストレートをブロックで締めてくるのがわかっていたから、ブロックアウトやブロックの間、わずかに空いたコースを狙い、あえてストレートに打ち続けた。

「ここだけは押さえたい、と思うところで決められたらダメージが大きいと思ったんです。だから相手が嫌がることをやって点を取りたかった。こういう特別な舞台に何度も立たせてもらってきたから、すごくワクワクしたし、最後まで楽しくプレーできました」

【次ページ】 石井が得た「自信」。

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