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『ボス、俺を使ってくれないか?』
「本当みたい」とニヤニヤできる、
悩める野球選手たちの物語。 

text by

万城目学

万城目学Manabu Makime

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photograph bySports Graphic Number

posted2019/04/24 07:30

『ボス、俺を使ってくれないか?』「本当みたい」とニヤニヤできる、悩める野球選手たちの物語。<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

『ボス、俺を使ってくれないか?』中溝康隆著 白泉社 1300円+税

 近ごろ小説の世界においては、お笑い芸人やアイドルといった本来はテレビの向こう側に住んでいた人々が、文字という媒体を使って、自らの活動をフィクションのかたちを借りて描く――、そんなひとつの流れがある。

 その際、著者と同じ職業であるお笑い芸人やアイドルがそのまま主人公として登場する。古くから元新聞記者や元自衛官など特殊な経歴を持つ作家が、己が所属した世界を舞台に小説を書く例は多く、これはその進化形とも言える流れだが、

「野球選手が書いた小説」

 というものはいまだ聞いたことがない。

 引退した名選手もしくは現役バリバリのスター選手が野球論を語る本はあっても、たとえば、限りなくジャイアンツと思しき架空の球団を舞台にして、「宅配便業者」と思しきキャッチャー、「ガッツ」と思しきFA移籍選手、「雑草魂」と思しき大リーグ志望選手、「グータッチ」と思しき監督などが登場し、そんな彼らが一人称で考え、語る小説なんていうものは、そうそうないのではないか。

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