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久保裕也の初得点で相手サポ歓喜?
ドイツでも稀な、超仲良し2クラブ。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byUniphoto Press
posted2019/04/20 09:00
日本代表の将来を担うべき1人である久保裕也。ブンデス終盤戦での正念場で実力を見せられるか。
友情のスカーフと落とせない一戦。
僕の限られた観戦経験で、これほどまでに友好的な試合会場は初めてでした。もちろん試合中はピッチ上の戦いに一喜一憂して熱い応援が繰り広げられていましたが、会場全体に多幸感が満ち溢れているといいますか、平和にサッカーを観戦できる楽しみを享受しているといいますか……。
両チームのエンブレムがプリントされたマフラーを見せてもらうと、「Schal der freundSchaft」と書いてありました。「友情のスカーフ」という意味です。
一方、今回のゲームはホームのニュルンベルクにとって1部残留を果たすために絶対に落とせない一戦で、必然的に試合内容は白熱しました。
我らが久保裕也は、残念ながら2戦連続のベンチスタート。ニュルンベルクは前半終了間際にマティウス・ペレイラがPKを獲得しましたが、ハンノ・ベーレンスのシュートをGKアレクサンダー・ニュベルに弾かれてしまいます。そんな中、久保はティム・ライボルドが負傷でプレー続行不可能になった50分に急遽交代出場を命じられてピッチへ降り立ちました。
久保は前節のシュツットガルト戦でも味方選手の負傷で前半途中から出場しましたが、後半途中に交代……。途中出場、途中交代というのは選手にとって非常に悔しいもので、その心中は察するに余りあります。
初ゴールに「クボ!」の大合唱。
シャルケ戦のハーフタイム。同じく控え組のチームメイトと離れて軸足の裏へボールを通すクライフターンを反復する彼を観て、「何とか結果を残してほしい」と心の中で懇願していました。
すると82分、右サイドからペレイラが上げたアーリークロスに反応した久保が、左のポストに当てながらヘディングシュートを決めてついにニュルンベルクが先制!
しかも、これが久保のブンデスリーガ初ゴール!
試合後インタビューに備えてミックスゾーンへ向かおうとすると、道中のコンコースで僕が日本人だと気づいたのか、皆さん「クボ! クボ!」の大合唱。青白のユニホームを着たオジサンも唱和しているので、「あなたは喜んでちゃダメでしょ」と思いつつ、全然コンコースを抜け出せません。
「頼むから通してくれー」と叫んでいたら、再び大歓声が起き、スクリーンにはシャルケDFのマティヤ・ナスタシッチが同点ゴールを決めているシーンが映し出されていました。