ゴルフPRESSBACK NUMBER
ウッズが得た「一番幸せな優勝」。
なぜ彼の雰囲気は変わったのか。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2019/04/16 11:40
2018年のツアー選手権に続き、マスターズを制したタイガー・ウッズ。彼の完全復活をどれほどの人が信じていただろうか。
過去4勝、オーガスタを知り尽くしている。
4度目の腰の手術後、ようやくツアー復帰した昨年1月以降、ウッズはいろんなステップを1つ1つ踏み、そのたびに一歩一歩、前進してきた。
全英オープンではフランチェスコ・モリナリと勝利を競い合って敗れた。全米プロではブルックス・ケプカと優勝争いを演じ、やはり敗れた。
勝つことはできなかったが、「あの2つの優勝争いが、ここで役に立つ」。今年のオーガスタにやってきたとき、ウッズはそう確信できていたからこそ、彼の表情は自ずと和らいでいたのだと思う。
ウッズの歩みを遡れば、アマチュア時代の1995年にマスターズに初出場したウッズは、プロデビュー直後の'97年大会を2位に12打差で圧勝した。そうやって過去4勝を挙げたオーガスタの戦い方、攻め方、守り方は「すべて頭の中のライブラリーに記憶されている」。
そう言い切れるほどの豊富な経験と知識を持ち合わせながら戦っているのは、今、ウッズただ一人である。その事実も今年のマスターズに臨んだウッズの心の礎になっていた。
一時は世界ランキング1199位まで。
2009年の暮れに始まった不倫騒動は世界を驚かせた。その後の不調や成績低迷は無残だったが、4度にわたる腰の手術後、痛みに顔を歪めるウッズの姿は見るに耐えず、2017年5月の逮捕劇は、もはやウッズがゴルフ界のみならず社会から消え去っていく最悪の事態さえ人々に予感させた。
だが、そんな奈落の底から這い上がり、戦いの舞台へ戻ってくることができた理由は、2人の子供たちが傍にいてくれたこと、母クルティダが見守り続けてくれたこと、そして、一時は世界ランキング1199位まで後退したウッズをチームやツアーの仲間たちが支え続けてくれたことだった。