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ウッズが得た「一番幸せな優勝」。
なぜ彼の雰囲気は変わったのか。
posted2019/04/16 11:40
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
AFLO
マスターズ5勝目を挙げたタイガー・ウッズがオーガスタナショナルのバトラーズキャビンと呼ばれる特別な一室の中で、前年覇者のパトリック・リードからグリーンジャケットを着せられ、その着心地に酔いしれていた。
「長い道程だった。これまでで一番大変な優勝だった」
その大変さを「hardest」と最上級で表現したウッズは、だからこそ、過去4度のマスターズ制覇のときにも、過去14度のメジャー優勝のときにも、見せたことがないほどの最上級のスマイルを輝かせていた。
優勝会見にやってきたウッズは、やはり笑顔をたたえながら、ジョーク混じりに言葉を切り出した。そこに彼の最上級の喜びが溢れ返っているかのようだった。
「いろんなシナリオになり得る展開だった。たくさんの選手に勝つチャンスがあった。大混戦だった。僕たちは、その中に居た。だからこうやって僕の髪は薄くなっていく。僕らの戦いは、それぐらい大変なんだ」
会見場が笑いの渦に包まれた。おどけ具合も最上級。14年ぶりにマスターズで勝利を収めたウッズの喜びは、かつてはクールであり続けた元王者を、そんなふうにおどけさせ、周囲にも笑顔をもたらしていた。
黄金期とはまた違うウッズのリラックス。
今年のオーガスタにやってきたウッズは、開幕前から「勝てる気がしている」と勝利を予感していた。
とはいえ、焦りや気負いは感じられず、むしろリラックスムードを醸し出していた。
優勝を意識していたことは言うまでもない。だが、「勝たなくてはならない」ではなく「勝ちたい」。そんなウッズの一歩引いた姿勢は、「メジャータイトルを獲るためだけに、ここに来た」と豪語していた黄金期のウッズには決して見られなかったものだった。
それはウッズの成長なのか、余裕なのか、果たして何によるものだったのか。彼に変化をもたらした要因は1つではなく、「いろんな要素が合わさった末に起こった」とウッズは振り返った。