メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
大谷同僚トラウトが470億円契約。
MLBでは「FA回避」が当たり前?
posted2019/04/14 08:00
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
Getty Images
これも時代の趨勢なのだろうか、それとも一過性の現象なのだろうか。
メジャーの契約形態に、明らかな異変が起こり始めた。
エンゼルスの主砲、マイク・トラウト外野手が、今季の開幕直前、12年総額4億2650万ドル(約470億円)で契約を延長した。3月24日(日本時間25日)に本拠地エンゼルスタジアムで行われた記者会見では、言葉を選びながらも、率直な思いを言葉に変えた。
「ファンの皆さんに、心から感謝しています。あなた方は、とてもアンビリーバブルな存在です」
現在、メジャー最高の選手と言われるトラウトが、米国プロスポーツ史上最大の契約を結んだこと自体が不思議なわけではない。ただ、トラウトの場合、順当にいけば2020年オフ、FA(フリーエージェント)になる予定で、その際は故郷ニュージャージーに近く、幼少期から大ファンだったヤンキースなど資金力豊富な有力球団の間で大争奪戦に発展すると見込まれていた。
今回の契約は、全球団へのトレード拒否権こそ含まれているものの、途中でのオプトアウト(契約内容の見直し)はなく、ほぼ生涯契約とも言える内容となった。つまり、トラウトは2年後の「夢」を追わず、エンゼルスに骨を埋める選択肢を選んだ。
トラウトの去就に影響した大型移籍。
伏線として、2012年新人王、'15年MVPでFAとなっていたブライス・ハーパー外野手(26)が、キャンプイン後の2月28日、フィリーズと13年総額363億円で契約した事例が影響したことは言うまでもない。その直前には、マニー・マチャド内野手(26)が、パドレスと10年3億ドル(約330億円)で契約を締結するなど、トラウト側が同世代の野手の動向を見極めていたことは想像に難くない。
ただ、昨オフのFA市場で最大の目玉と言われた2人ですら、交渉は難航を極め、多くの日数を要した。過去数年来、FA市場が停滞気味でもあり、2年後、28歳でFAとなるトラウトが、意中の球団との間で、今回のようなハーパー、マチャドと同レベルの大型契約を結べる保証は何もない。
エンゼルス側にしても、2年後に他球団との間で天文学的な数字のマネー合戦を繰り広げるよりも、独占交渉できる期間に話をまとめたい。今回の契約延長は、球界の傾向と双方の思惑が一致した結果だったに違いない。