フランス・フットボール通信BACK NUMBER
EU離脱に反対するガリー・リネカー。
プレミアリーグに与える影響とは?
text by
フィリップ・オクレールPhilippe Auclair
photograph byPhilippe Echaroux/L'Equipe
posted2019/04/14 11:00
かつてイングランド代表として名を馳せたリネカー。彼の声は少なからず国民に影響を与えているだろう。
政治家は成功したときだけ。
――ビザと労働許可証の取得なしに済ませるのは難しいと思いますか?
「現実的に……、しかしどのレベルでそれらを与えるのか? チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグに出場するチームにもビザが必要になってくるのか?
準々決勝の抽選から試合までの時間は4週間もない。その間に、観戦に行くサポーターも含めてビザの発給がスムーズにできるのかどうか……。
テレーザ・メイ首相がこう言ったのを私は覚えている。
『人々が自由に行き来できる時代は終わりにしましょう』と。
それが正しいと思ったから、多くが離脱賛成に票を投じたわけだ。素晴らしいじゃないか!
それではヨーロッパの他の地域からプレミアリーグを見に来る人々もビザが必要になるのか。サッカーの英国経済への影響(年40億ユーロの公共投資に相当。10万人の雇用を創出し、年間70万人が海外から観戦に訪れている)を考えれば、真剣に検討すべきことだ。
だが、そうしていないのは、単に“スポーツの”出来事にすぎないからだ。この国には固有のスポーツ大臣すらいない。政治家がサッカーに興味を持つのは、成功の余得にあずかれるときだけだ。本当にイラつく。(ガレス・)サウスゲイトの代表チームがワールドカップで国全体をひとつにしたときがそうで、誰もがサッカーに夢中になっているのは滑稽ですらあった」
EU離脱の“果実”を誰も語らない。
――あなたが日常的に接しているサッカー界の人々も話題にはしませんか?
「私はしているよ(笑)。答えはイエスだ。私の周囲の人々は真剣に考えている。ただ、離脱に関わったすべての人々と同様に、誰も2016年6月の投票結果の帰結がどうなるか、とりわけスポーツへの影響を深刻に捉えてはいない。
例えばF1チームを考えて見ればいい。今は8つが英国に本拠を置いているけど、サーキットから別のサーキットへの移動の際のロジスティクスの煩雑な仕事を、この複雑な状況でどうやっていけばいいのか。
国民投票のときにそうしたことがわかっていたら、結果が違っていたのは間違いない。EU残留が多数派を占めていただろう。
われわれは謀られた。投票のプロセスにおいてある種の不正があったとすら言える。そのことを今はほとんど誰もが知っている。
もちろんEUにも欠点はある。だが、弱者たちをのけ者にした責任が彼らにあるのではないのに、この国のメディアはあたかもそうであるかのように伝えた。それから2年半が過ぎ、英国の政治は混乱の極みにある。経済へ与える影響の大きさが実感できるようになって、国はかつてないほどに苦しんでいる。
私はあるひとつのことを語る人間が現れるのをずっと待っている。たったひとつのこと、EU離脱のポジティブな影響をひとつでも語れる人間を。離脱こそが美味しい果実であると……」