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マキロイが今年こそ優勝候補な理由。
「マスターズに勝てなくてもOKだ」
posted2019/04/10 17:00
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
AFLO
マスターズ開幕まで、すでにカウントダウンの段階に突入しているが、そういうときだからこそ次々に思い出されるのは、さまざまな選手たちが過去に噛み締めた数々の敗北のストーリーだ。
そして、近年で最も印象的だった敗北は「誰のどんな負け方だったか?」と問われたら、私は迷わず「2011年のローリー・マキロイの大敗」と答える。
北アイルランド出身のマキロイは2007年にプロ転向し、2009年に米ツアーにデビューしたばかりで、2011年マスターズに出たときは、まだ21歳の若さだった。だが、彼は未熟さを感じさせないほど堂々とリーダーボードを駆け上がり、最終日は優勝を心に誓いながらオーガスタの1番ティに立った。
だが、フロント9をプレーしていたときから、少しずつ彼の中で何かが狂い始め、それがついに大きな狂いとなったのが、後半へ折り返した直後の10番だった。
「この敗北を乗り越えるには時間が」
ティショットを大きく左に曲げたマキロイは、フェアウェイ左サイドの民家の陰から、まるで隠れん坊をしている子供のような格好で、ひょっこり顔を覗かせながら前方を眺めていた。
うろたえた表情。なんとも言えない不安を全身に漂わせていた。そんなマキロイの姿を見たとき、もはや彼の優勝はないと直感させられた。
残念ながら嫌な予感は的中し、彼はガラガラと崩れていった。「80」を叩いて、優勝どころか15位タイまで転落した。惜敗ではなく、無残な大敗だった。
彼はその夜、母国にいた父親ゲリーに電話をかけ、その悔しさを長い間、滾々と打ち明けたそうだ。
「何かを学びさえすれば、負けは必ず勝ちに変わる。電話をかけてきた息子に、私はそう伝えた」
後に父親ゲリーはそう明かしてくれたが、そうは言っても父は傷心の息子をとても気に病み、「ローリーがこの敗北を乗り越えるまでには、きっと時間がかかるだろう」と胸を痛めていた。