マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
センバツの裏で九州の逸材を発見。
熊本には11球団のスカウトが集結!?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/04/04 07:00
センバツの時期も、出場しない学校にとっては夏のための大切な準備期間である。全国で熱い準備が進んでいる。
翌日の熊本にはスカウトがビッシリ。
翌日の30日。熊本・藤崎台球場のネット裏は、私の“目勘定”だが11球団のスカウトの方たちでいっぱいになっていた。
2人、3人で訪れた球団もあり、部長クラスのスカウトも3人、4人とその姿を見せていた。
「毎年、桜は熊本城なんだけど、今年はいちだんと見事だなぁ」
藤崎台球場は熊本城の敷地の中にあって、お花見を兼ねてのお客さんも多いと聞いているが、こんなノンキなことを言いながらも、視線がグラウンドから離れないのは、その日の藤崎台には、プロ注目のドラフト候補が5人、6人と出場するからなのだ。
中でも、第1試合に先発した有明高・浅田将汰投手(181cm83kg・右投右打)に、スカウトたちの視線が集まった。
すでに昨年の秋から145キロ前後の球速帯と、タイミングが合った時の高校生ばなれした長打力で注目の選手だったが、春の県大会ではこの日が初めての登板だから、余計に人が集まるかたちになった。
カメラ越しに気づく“球持ち”の良さ。
立ち上がり、力んで気負って、テークバックでアゴが上がって球筋が荒れる。 どうなることかと思ったら、2回の投球練習をカーブから入った。ちょっと頭が冷えてきたようで、このへんから、直球が140キロでも低めにギューンと伸びてきて、これだけ人を集めるだけのことはあるな……と思わせてくれる。
一塁側ベンチの上からカメラを構えた。シャッターを押すタイミングが、なかなかつかめない。いまだ! と思ってシャッターを押しても、撮れている画像では、まだ右手が体の後ろにある。いわゆる“球持ち”がいいのだ。
ただ、どうだろう。テークバックが深すぎやしないか。“後ろ”を大きく取りすぎるせいで、フォーム全体のボディーバランスが難しくなって、そこに気を遣うぶん体重移動の勢いを失っているとしたら……。
もっと前でエネルギーを爆発させる意識にしたほうが、「パワーピッチャータイプ」だけに得が多くなるように思う。
3回あたりからは、落差の大きなカーブやチェンジアップでカウントを作れる余裕も生まれ、程よく力みもほぐれて、見るからに快適に投げていた。
7連続も含めて合計19奪三振で完封。9回1死まではノーヒットノーランを続けていた。
やってしまうんじゃないかと思った途端に、そんなにいい当たりじゃなかったゴロが一二塁間を抜けていって、思いっきり狙っていたのだろう、あーっと天を仰いだ笑顔がかえってうれしそうに見えて、ちょっと救われた。