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「怒るとめちゃ怖い」高校野球監督…“ある選手”が書いた30冊の日誌「その中身」…それでも愛された神村学園・小田大介とは何者か? 甲子園ウラ話
posted2024/08/27 11:05
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Hideki Sugiyama
腕と拳の芸術——。
そう評したいほどに神村学園の監督、小田大介のガッツポーズはレパートリーが豊富だった。
地面に突き刺す。ラリアートのように腕を横殴りに振る。天に向かって突き上げる。
小田は刺すように言葉を吐いた。
「ユニフォームを着たときは、やっぱり戦闘服じゃないですけど、勝ちにいかなければならないんで」
私はあらゆるものをなぎ倒してしまいそうな迫力満点のラリアート風ガッツポーズがいちばんの好みだった。
なので、点が入ったとき、つい小田を見てしまう。
準決勝“あの場面”…その時、小田は?
8月21日、準決勝の関東一高との試合もそうだった。1−2の1点ビハインドで迎えた9回表、2アウト一、二塁で、代打・玉城功大が打席に立つ。玉城はいきなり2ストライクと追い込まれながらも、1ボール2ストライクからの5球目を芯でとらえ、打球はセンター前に抜けた。
際どいタイミングだったが、三塁コーチャーが腕をぐるぐるまわす。
私はランナーを見つつも、小田を注視していた。センターからノーバウンドのストライク送球が返ってきた。二塁走者はホームベースに頭から突っ込んでくる。
小田が右腕を直角に曲げ、握り拳をつくった。
小田の回想だ。
「ガッツポーズしたつもりはないんですけど、もう、回ってこい、還ってこいという思いで、そういう格好になったんでしょうね」
直後、小田の視線の先で、審判が小田とまったく同じような「格好」をしていた。
そう、アウトだった。
この夏、小田が最後に見せたガッツポーズは、皮肉なことにアウトポーズにも似ていた。
怖い監督…なぜ愛される?
もはや死語とも言えるが、小田は「熱血漢」を絵に描いたような指揮官である。
控え投手の釜昊暉が言う。