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オカダ・カズチカの涙に見えた想い。
MSGでのIWGP戦と柴田勝頼への誓い。
posted2019/03/25 18:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
オカダ・カズチカはSANADAをレインメーカーで倒して「ニュージャパンカップ」に優勝したが、なぜか、その目からは大粒の涙がこぼれていた……。
3月24日、新潟・アオーレ長岡。
リングサイドのテレビ放送席には柴田勝頼が元気な姿を見せて、決勝戦の解説を続けていた。そのスーツ姿の柴田の存在が、オカダにとって特別なものだったのだ。
柴田は2017年3月20日のアオーレ長岡で行われたニュージャパンカップ決勝戦でバッドラック・ファレに勝って優勝。その勢いのまま、4月9日の両国国技館でIWGP王者だったオカダに挑戦してきた。
国技館では、38分余にわたる激闘の末にオカダが柴田を下したが、柴田は控室に戻る途中で倒れる。そのまま救急車で病院に搬送され、開頭手術を受けることとなった。
硬膜下血腫だった。
あれから2年の時が過ぎていたが、オカダの心の中にはずっと柴田の姿があった。
オカダは昨年6月、IWGP王座を失った後、豹変する。風船で遊んだり妙な言葉を並べて奇矯な言動を見せ続けたオカダに対し柴田は、「変に格好つけることはよくない」と真っ向から否定した。
柴田にとってみれば――自分と文字通り生死をかけた戦いをした男が、スタイルを変えたことに対する憂いの表明でもあったのだ。
熱い戦いを何度も見せたオカダ。
今回、オカダは「きつかった」とニュージャパンカップでの連戦を振り返ってみせた。前夜も準決勝で石井智宏と、まるで終わりがないかのようにどこまでも熱く戦ってみせてもいた。
「G1クライマックスもきついけれど、ニュージャパンカップもきつかった。苦労して優勝できたと思ったら、また次があるわけなんで。大本命のオカダ・カズチカがこうして勝ったでしょう。でも勝って終わりじゃない。次、勝って、やっと終わりと言いたいけれども、また、その次が始まるんで……。
ここからマディソン・スクウェア・ガーデン(MSG)まで、気持ちを切らさずに、進んでいきたいと思います」