オリンピックへの道BACK NUMBER
宇野昌磨が進む新たなステージ。
「結果を求めたい」と話す理由。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2019/03/21 08:00
4度目の世界選手権出場となる宇野昌磨。心境に変化が生まれつつある中で、どんな演技を見せてくれるだろうか。
期待に応えるための努力を。
責任感を抱いたことで、おのずと周囲の期待にも目が向いてきた。10月のNHK杯へ向けた記者会見では、このように語っている。
「皆さんの期待に応えられるよう、精一杯、努力したいと思っています」
周囲の期待とは、成績にほかならない。期待に応えたい、結果を残したいという思いが強くなった。そのためにも実力を磨きながら、練習での積み重ねを試合で体現するための自信を得たいとも考えるようになった。
世界のトップを争うスケーターとして試合に出続け、成績も残してきたからこそ立場も変化してきた。追う立場ではなく、追われる立場となることもしばしばだ。
「楽しむのは挑戦する側だからこそです。いつまでも追いかけるだけじゃなく、追われる立場であることを自分で考えながら、やらないといけないと思います」
転機となった2つの試合。
一段上にステップアップしたいと願う宇野にとって、転機となる試合が2つあった。
1つは昨年末の全日本選手権である。
宇野はショートプログラム当日のウォーミングアップ中、足を負傷した。棄権を勧める周囲の声もあったが、欠場を拒んだ。樋口美穂子コーチの「どうしてそこまで出たいの?」という問いかけへの答えが印象的だった。
「僕の生き方です」
この試合で得たのは、課題としてきた「自分を信じること」だった。
「今シーズン、自分を信じるというテーマを掲げながら、なかなかそれが成し遂げられなかった。自分を信じることは難しいなと悩んでいたんですけど、アクシデントの中で信じることができた。その経験を今後の試合に生かせたらな、と思います」
信じて演技に臨む心境を、つかめたのだ。