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<エースが明かす攻略秘話>
イチロー開幕、かく戦えり。

posted2019/03/20 12:00

 
<エースが明かす攻略秘話>イチロー開幕、かく戦えり。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

'96年3月31日、神戸での開幕戦。岩本はイチローをフライに打ち取る。

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赤坂英一

赤坂英一Eiichi Akasaka

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NIKKAN SPORTS

 日本でプレーしていた頃のイチローはシーズン初戦にどんな勝負を見せたのか。  3月20日の東京ドーム開幕戦を前に、彼と鎬を削ったエースたちが証言する。

 1994~2000年に7年連続で首位打者となったオリックス時代、イチローは開幕戦に登板した日本の投手とどのような対決を見せていたのか。当時からのファンなら、本拠地・神戸で行われた'96年の開幕戦で、イチローが日本ハム・岩本勉に敬遠されたシーンを覚えているかもしれない。

 岩本はもともと、開幕カードの2戦目に先発する予定だった。前日の開幕戦が雨で中止となり、エースの西崎幸広がスライドしなかったため、岩本本人曰く「記録上の開幕投手へ繰り上がった」のである。

 1-0とオリックスがリードしていた8回2死二塁、3打数無安打だったイチローの打席で捕手・田口昌徳が立ち上がると、スタンドの観客は激しいブーイングを浴びせた。オリックスは阪神・淡路大震災が起こった'95年に優勝、イチローはチームとともに復興の象徴となった。その翌年、本拠地での開幕戦で歩かされたら、地元のファンが怒るのも無理はない。岩本が振り返る。

「お客さんの声はよう聞こえてましたよ。何逃げてんねん、勝負せんかい! とね。でも、ぼくに言わせれば、勝負を避けるのも勝負のうち。あと1点取られたら終わりだという試合の終盤で、イチローとまともに勝負する投手がどこにおりますか」

 上田利治監督は負けず嫌いの岩本が敬遠に反発し、力んで暴投しないかと心配したらしい。捕手の田口をマウンドに行かせ、きちんと歩かせるよう確認させている。

「そんなことされんでも、ぼく自身、イチローやから当然だと思った。すごい野次や罵声の中でボール4球投げて、ああ、これがプロの世界なんや、おれもプロ野球選手になったんやなあ、と感じてました」

 その岩本以上にクールだったのが、打席に立って4球見送ったイチローである。

「表情ひとつ変えませんでした。勝負せんかい! みたいな気配はまったく感じさせなかった。まさに、ザ・プロですわ」

この記事は雑誌『Number』の掲載記事です。
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