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サンウルブズSOパーカーの強い心。
NZ銃乱射事件翌日のキック全成功。
 

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多羅正崇

多羅正崇Masataka Tara

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photograph byTsutomu Takasu

posted2019/03/19 15:00

サンウルブズSOパーカーの強い心。NZ銃乱射事件翌日のキック全成功。<Number Web> photograph by Tsutomu Takasu

今シーズン、キック成功率100%を誇るパーカー(右から2人目)。サンウルブズにとってなくてはならないスタンドオフだ。

難しい角度のキックも決める。

 それでも試合はやってくる。サンウルブズはレッズから今季2勝目を挙げることで、世界に存在意義をアピールする必要があったのだ。

 試合は前半、サンウルブズのペースで進んだ。両ウイングを務める大東大卒のホセア・サウマキ、南アフリカ出身のゲラード・ファンデンヒーファーの活躍もあり、前半だけで3トライを奪った。

 トライ後のゴールキックはいずれも難しい角度のゴールキックだった。しかし楕円球は秩父宮の空に鮮やかな放物線を描き、いずれもHポールを通過した。

 しかしチームは時間が進むごとに規律面で苦しんだ。スクラムでは再三反則の笛を吹かれてエリアを後退。モールの守備でも反則があった。

「痛かったのがペナルティです。スクラム、モールでプレッシャーがかかったと思います。(自陣の)コーナーに追い込まれました。イグジット(自陣脱出)も上手くいかなかったです」

「運が良かっただけ」と謙遜も。

 迎えた後半、サンウルブズは守備網の構築やタックルが甘くなって劣勢に立たされると、レッズに4トライを許して逆転負けを喫した。

 パーカーは5本あったプレースキックを全て成功(4ゴール、1ペナルティゴール)させて、チームに活力を与え続けた。最終スコアが3点差(31-34)で終わったのは、パーカーの存在があったからこそだろう。

 銃乱射事件の悲しみに暮れた翌日も、パーカーは素晴らしいキッカーだった。強い精神力を備えたプロフェッショナルは試合後、「運が良かっただけ」と謙遜していた。

 それでも数字は、パーカーのキック精度の高さを証明している。第5節までに19本すべてのプレースキックを成功させ、今年もリーグトップとなる成功率100パーセントを維持しているのだ。

 これほどの選手だから他チームからオファーがあったはず。今季開幕前にオファーはなかったのかと尋ねると、パーカーは笑顔で「ありません」と答えた。

 筆者は思わず「なぜ?」と返してしまった。SRレコードを作ったほどの歴史的な選手なのに……と感じたからだ。それでもパーカーは「分からないよ」と言って、はにかんだ。

【次ページ】 175cm、84kgという体格ながら。

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