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サンウルブズSOパーカーの強い心。
NZ銃乱射事件翌日のキック全成功。

posted2019/03/19 15:00

 
サンウルブズSOパーカーの強い心。NZ銃乱射事件翌日のキック全成功。<Number Web> photograph by Tsutomu Takasu

今シーズン、キック成功率100%を誇るパーカー(右から2人目)。サンウルブズにとってなくてはならないスタンドオフだ。

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多羅正崇

多羅正崇Masataka Tara

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Tsutomu Takasu

 3月15日、ニュージーランド(NZ)のクライストチャーチで銃乱射事件が起きた。その翌日、東京・秩父宮では、スーパーラグビー(SR)参入4年目となるサンウルブズ(日本)がレッズ(オーストラリア)戦に臨んだ。

 試合前に黙とうが行われたこの一戦、サンウルブズはマイケル・リトル共同主将を筆頭に、メンバー入りの23人中7人がNZ出身だった。

 そして、正確なキックでチーム最多11得点をマークしたサンウルブズの司令塔、スタンドオフのヘイデン・パーカーもその1人だった。

「生まれた場所はクライストチャーチから車で2時間、家族は3時間のところに住んでいます。実家のわりと近くで、あのようなことが起きるとは思いませんでした。NZにとって悲しい日になりました」

SRレコードとなる38回連続成功。

 パーカーはクライストチャーチがあるNZ南島のオマルーに生まれた。19歳で州代表デビューし、20歳以下のNZ代表も経験した実力者だ。

 2013年からSRハイランダーズに5シーズン在籍し、2015年度は日本のパナソニック、2018年度には神戸製鋼でプレー。安定したゲームメイク、献身的なタックルも魅力的だが、最大の武器は精確無比な左足だ。

 サンウルブズ1年目の昨シーズン、リーグで断トツとなるプレースキック成功率96%(50本中48本成功)をマーク。38回連続成功というSRレコードも樹立するなど、SR史上最高レベルの名キッカーと言っていい。

 ただレッズ戦を迎えるまでの1週間、ピッチ内外で試練続きだった。

 パーカーは練習で「1週間を通して良いキックが蹴れていませんでした」と語るなど、安定感を欠いていた。加えて、サンウルブズを取り巻く動きも穏やかではなかった。

 SRの運営団体『SANZAAR』は、2020年の契約満了を機にサンウルブズのリーグ除外を検討していると発表。連日の報道を受け、サンウルブズは13日の水曜日に、公式HPなどを通じて存続を訴えるメッセージを発表することになった。

 そして金曜日には「NZで起こることではない」凶行の報せが飛び込んできたのだ。

【次ページ】 難しい角度のキックも決める。

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