“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
鹿島の遺伝子が染み付いた21歳。
町田浩樹が追う昌子・植田の背中。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/03/05 08:00
昌子源、植田直通が海外へと旅立った鹿島。その中で町田浩樹はどのような成長曲線を描けるか。
常勝軍団の中で優しすぎる。
彼の性格は一言で言うと、優しい。190cmの高さを持つ左利きのCB。そんな希少価値を持ちながらも、その優しすぎる性格からか闘争心をむき出しにして戦うプレーは多くなかった。それは「常勝・鹿島」にふさわしい姿ではなかった。
ただ彼には底知れぬポテンシャルがある。身体能力はもちろんスピード、頭の回転も早い。そしてサッカーに打ち込んで、人の話を聞ける真摯さを持ち合わせている。
だからこそ、彼は一皮剥ける必要があった。それがまさに今季なのだ。
「今年は個人的に責任があるシーズンだと思っています。昨季から(昌子)源さんと(西)大伍さん、(小笠原)満男さんが抜けて、僕の責任も増しました。この試合だけではなく、1年を通しての責任感を持っているんです。『自分がやらないといけない状況』になりましたし、それはクラブからのメッセージだと思うので、しっかりと受け止めてプレーしたいと思っています。だからこそ、こうやって“代理”で試合に出ても勝ち切らないと最高のアピールにはならないんです」
昌子、西、小笠原が去って。
ロシアW杯後に植田直通がベルギーのセルクル・ブルージュに、このオフには昌子がフランスのトゥールーズに、西がヴィッセル神戸に移籍した。そしてチームのレジェンドであり、シンボルでもあった小笠原が現役引退した。
これまでの鹿島の根幹を担ってきた選手がごっそりと抜け、チームは新たな局面を迎えている。彼にとっても教えを請うた選手が一気にいなくなり、甘えが一切許されなくなった環境となった。
「アントラーズの選手は言葉で伝えるより、姿勢で伝える選手が多いと思うんです。そこから学ぶものをたくさん学んできました。僕は植田くんと源さんを3年間、そして満男さんは小学生の頃から見てきました。植田くんと満男さんは背中で語るタイプで、源さんは試合後に細かい部分まで指摘してくれた。スピリットは引き続いでいるつもりです」