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鹿島の遺伝子が染み付いた21歳。
町田浩樹が追う昌子・植田の背中。 

text by

安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byTakahito Ando

posted2019/03/05 08:00

鹿島の遺伝子が染み付いた21歳。町田浩樹が追う昌子・植田の背中。<Number Web> photograph by Takahito Ando

昌子源、植田直通が海外へと旅立った鹿島。その中で町田浩樹はどのような成長曲線を描けるか。

セットプレーでも惜しいシーン。

 攻撃でも存在感を示した。27分、MF永木亮太の左FKから、町田がゴール前に絶妙なタイミングで飛び込む。190cmの高さを活かしたヘッドがネットを揺らしたが、キックの際にMF土居聖真がオフサイドポジションにいたことで、ノーゴールの判定となった。

 町田は後半も高い集中力を維持し、73分にビッグプレーを見せる。センターライン付近中央で中村がボールを受けた瞬間のことだ。町田の視野にはパスを受けに行く大島僚太と、次のパスを受ける準備に入った小林悠の2人が入った。

 大島が縦パスを受けた瞬間、小林がスペースに抜け出そうとする。この動きを見逃さなかった町田は、大島からのスルーパスに対し、鋭く身をひるがしてダッシュ。小林との競争に勝って、スライディングでボールを左タッチライン外へ掻き出した。

 試合は両者譲らず、1-1のドロー決着。今季リーグ戦初勝利こそ掴めなかったが、鹿島は価値ある勝ち点1を得た。

秋田さん、岩政さんだったら。

 それでも試合後、町田は悔しさを滲ませた。

「こういう苦しい試合で勝ち切れる力をもっと身につけていかないといけない。それにこういう試合こそ、鹿島のCBたるもの、セットプレーで得点源にならないといけないから、そこは悔しいです。(試合に訪れていた)秋田豊さんだったり、岩政(大樹)さんだったり、鹿島のCBはこういう試合で点を取っていましたから」

 FKからの失点以外は抑え、得点にこそならなかったが強烈なヘッドを見せた。及第点以上の評価できる内容だったが、彼はそれを是としなかった。

「自分の使命感、責任感が強くなっていて、『やらなきゃいけない』と自分自身に言い聞かせています。今は(チョン・)スンヒョンが怪我をして“代理”という形で僕が試合に出ています。それでも勝ち続けるのが大事だし、DFなので、無失点を続けることが大事なんです」

 昨年までと明らかにメンタリティーが変わってきた。もちろん町田もプロ4年目で、頭角を現さないといけない年代でもある。だからこそ意識の変化は当然だが、彼の素顔を知る1人としては、彼の将来を大きく広げるのでは、と感じる。

【次ページ】 常勝軍団の中で優しすぎる。

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