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ワラターズ戦のスクラムは100点!
2015年W杯戦士・山下裕史の活躍。
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph byKiichi Matsumoto
posted2019/02/25 17:00
山下裕史の存在感は際立っていた。スクラムで押せれば、サンウルブズにとっては巨大な拠り所になる。
豪州代表の主将が「やられました」。
しかしシーズン開幕前にHO庭井祐輔がケガで離脱。PR山下、HO坂手淳史が中心となって、日本人選手も組みやすい8人一体のスクラムへ微調整を加えていった。
ところが2月16日、シンガポールが舞台となった今季開幕戦だった。
サンウルブズは南アフリカのシャークス相手にスクラムで劣勢。10-45という大敗の要因のひとつになった。
やはり今シーズンのサンウルブズはスクラムが課題なのか。
そんなムードのなかで第2節ワラターズ戦を迎え、2回のターンオーバーなど、スクラム戦で圧倒したから観客席も記者席も放送席もアッと驚いた。ワラターズのFW8人のうち、5人は昨秋の豪州代表だったのだ。
そのうちの1人で、ワラターズでも豪州代表でも主将のFLマイケル・フーパーは「サンウルブズの強いセットピース(スクラム)は想定以上に良かった。特に前半はやられました」と率直に振り返った。
山下「FWコーチを褒めておいてください」
なぜ押せたのか。まずはシャークス戦を受けてコミュニケーションを深まっていることが大きい。山下が言う。
「今週、サンウルブズのなかでコミュニケーションを取って、お互いにしてほしいことを言い合いました。シャークス戦ではバインド(スクラムを組む前の掴む段階)でプレッシャーが掛かって、相手の重りをいったん受けてから返そうとしていました。今回は受けずに返せたので良かったです」
前半15分のスクラム・ターンオーバーは会心だった。全体としても「不満はないですね。最低限の仕事はしたかなと思います」と自身に及第点を与えた。
「バインドのところでも乗らせなかったですし、先に仕掛けて、こっちが先を取れました。100点だと思います。FWコーチを褒めておいてください」
この日は得意のタックルも随所で披露した山下。今年9月に開幕する日本・アジア初開催のW杯日本大会へ向けては、「与えられた仕事を着実にこなしていくだけ」と目の前にフォーカスするつもりだ。
次戦の相手は、2016年に在籍した古巣チーフス。どこか危うくも魅力的な2019年のサンウルブズ。次はどんな戦い、どんなスクラムを見せてくれるのだろうか。