JリーグPRESSBACK NUMBER
「風間監督に気づかせてもらった」
名古屋・ジョーの柔と剛のゴール論。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKiichi Matsumoto
posted2019/02/22 11:45
Jリーグで独自のスタイルを作り上げる名古屋。セレソン歴のあるジョーも風間理論で飛躍した。
1回のチャンスで間違えられない。
しかしながら1年目のシーズンは序盤、下位に沈んで15戦勝ちなしの苦しい時期も過ごした。エースの仕事ができず、悩んだこともあった。不安もあった。だが今、取り組んでいることは必ず、実を結ぶとも信じていた。
大切にしていたのは「冷静さ」だったという。
大きな息をついてから、彼は言った。
「苦しい状況になると、そこから抜け出したいという思いもあって心は落ち着かなくなるものです。そういうときこそ僕は、メンタルをコントロールします。試合ではチャンスが1回しかないかもしれません。
その1回のチャンスで、蹴るタイミングやシュートコースを間違えるわけにはいかない。気持ちをコントロールして、冷静にプレーできればゴールを決められるし、勝利に近づくと思っていましたから」
残留決定に感極まって涙した。
残留が掛かった最終節のホーム、湘南ベルマーレ戦(12月1日)。2点ビハインドの展開から、ジョーが2つのPKをきっちりと決めて同点に追いつき、勝ち点1を手にした。2つとも、コースは得意とする右隅。相手GKの秋元陽太に反応されたが、強い思いでねじ込んだ。まさに「剛」のジョーが、奮い立って残留をもぎ取ったのだった。
「絶対にミスしてはいけない場面。1回目もそこに蹴っていたので、キーパーも狙ってくるかもしれない。でも自信のあるところに、自信を持って蹴るという判断を、冷静にすることができました」
ジュビロ磐田がアディショナルタイムで失点して負けたため、グランパスの15位残留が確定した。感極まって涙するジョーの姿は、感動を呼んだ。
「与えられた責任が凄く重かったなかで、最後の最後に残留が決まって、いろんな思いが心に入ってきてしまって……。1年目でいろんな難しい状況もありましたが、最後の最後に残留を決められて本当にうれしかったですね」
重い責任を、ようやく背中から下ろすことができた。
どれほど重かったかは、その涙だけが知っている。