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中村剛也の選出で白熱する、侍ジャパンの“4番論争”。~6度のホームラン王、ライバルは山田太郎!?~
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph byHideki Sugiyama
posted2015/11/04 06:00
今季は139試合に出場して37本塁打、124打点で2冠。通算満塁本塁打16本の新記録も。
ホームラン王に輝くこと、6度。この数字は王貞治、野村克也に次いで歴代3位だ。通算300本以上のホームランを放ったバッター41人の本塁打率では、王、アレックス・カブレラ、田淵幸一の次に彼の名前が挙がってくる。
ライオンズの中村剛也――バットを振ればホームランが飛び出す、天性のアーチストである。彼は子どもの頃から遠くへ飛ばすことにかけては誰にも負けなかった。中村がこう言っていたことがある。
「人よりも遠くへ飛ばしたい……それだけでした。飛距離では絶対に負けたくないという思いだけ。そのためにバットを目いっぱい長く持って、それを振る。振った後にもぐらつかない。思い切ってスイングができるのが一番だと思って、いつもマスコットバットを振ってました」
これほどの実績がありながら、中村は侍ジャパンとは縁がなかった。過去、彼が侍ジャパンのユニフォームを着たのは2012年、台湾代表と戦った1試合だけ。前回のWBCでも左ヒザの手術を受けた直後で、代表入りは叶わなかった。それが今回のプレミア12では最終メンバーに入った。もちろん、4番候補である。侍ジャパンのトップチーム監督に就任以来、「4番は中田翔」だと言い続けてきた小久保裕紀監督は、こう言った。
「(4番は)中田翔で、という思いはありますが、中村はこれまで代表の試合に縁がなかった選手。(ケガなく)レギュラーシーズンをフルに出られればホームラン王を獲っている実績のある選手ですから、体調面もありますけど、そのあたりは考慮しながら考えていきたい」
侍ジャパンの4番は誰か――ここまで議論が盛り上がったのは初めてだ。中田は今年、30本塁打、102打点とキャリアハイをマークしたし、24本塁打、93打点ながら2年連続で打率3割をマークする筒香嘉智を推す声も根強い。トリプルスリーの柳田悠岐、山田哲人だって4番を打てる器である。しかしそんな声もどこ吹く風であろう中村に、かなわないと思ったバッターはいるのか、訊いてみたことがある。中村はこう言っていた。
「『ドカベン』の山田太郎かな。山田がボールをスタンドティーの上に置いて、バットの風圧でボールを落とすシーンがあるんです。あれ、僕もやってみたけど、無理です。絶対に落ちません(笑)」