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金本知憲新監督にタブーはない!
阪神に流れる“改革者”の系譜を継げ。

posted2015/11/02 10:30

 
金本知憲新監督にタブーはない!阪神に流れる“改革者”の系譜を継げ。<Number Web> photograph by Kyodo News

すったもんだの末、1位指名にこぎ着けた明大の高山俊外野手と。後ろはやはり明大で2位指名された坂本誠志郎捕手。

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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Kyodo News

 おい、おい……。

 まさか、そんなこと……。

 いくら子供だからって……やめておけって。

「王様は……裸じゃないか!」

 あ~あ、言っちゃったよ。

 やばいだろう、これ。

 でもさ……何か、すっきりしたな。

 おそらく童話の世界は、こんな空気だったのではないだろうか。

 ただ、これを現実の世界で、しかも、大人がやるとなれば、比較にならないほどに角が立ち、一方で、その爽快感たるや格別なわけで……。

 この10日間、伝統を誇る阪神タイガースのタブーをぶち壊し続けている人がいる。

 だれあろう、金本知憲新監督だ。

 まず監督就任後、甲子園で選手と初顔合わせをした日だった。全体ミーティングなどで自身の考えを伝えた指揮官は報道陣にこう明かした。

「個別でも話したけど、一番は鳥谷(敬)。『お前が変わらないとチームが変わらない。すべて、もの足りなさすぎる』と言った」

 不動の遊撃手。実績、実力もさることながら、野球への姿勢もチーム内で尊敬され、ここ数年は“聖域”となっていたキャプテンにいきなりダメ出し。これまでだれも口にできなかったことをあっさりと指摘する様は圧巻だった。

坂井オーナー「電鉄体質が限界にきた」

 ではなぜ今、金本監督なのか。

 監督人事における任命権者である坂井信也オーナーは、理由をこう表現する。

「リスクをとらないというか。ここまで、足りない部分を少しずつつぎはぎしながらやってきた。それが電鉄体質と言われればそうかもしれない。ただ、それが限界にきた。一度、壊さなければならない」

 たとえ遅れが出たとしても、事故は起こさない。堅実を旨とする鉄道会社の体質を、本社トップはよく知っている。世間がそれを人気球団と結びつけ、どう揶揄しているかも含めて。

【次ページ】 野村克也、星野仙一という改革者を招いた歴史。

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