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棚橋弘至IWGP王座初防衛に失敗!
新王者は26歳のスイッチブレイド。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2019/02/12 12:30
2013年にプロレスラーとしてデビュー後、イギリスのインディー団体で活躍。2015年1月に新日に入団したニュージーランド生まれのジェイ・ホワイト。
「徹底してオマエの足を狙った」
リング上に、もう立ち上がれない棚橋がいた。1月4日、東京ドームでの王座返り咲きから38日目、棚橋は大阪府立体育会館で散った。
「もう無理だ」という言葉だけを残して棚橋は控室の奥に消えた。
「ヤングボーイたちが一生懸命にオマエをかばっているけれど無駄なことだ。他の選手以上に大きくロープを開けないと、オマエはリングに入ることすらできない。簡単にロープをまたげるまで足が上がらなくなっているのを、オレはお見通しだ。それが、どれほどの痛みなのかもな!
徹底してオマエの足を狙って、ドラゴンスクリューを決めて、TTOで総仕上げだ。それでもう、棚橋は立つことができなくなる。そしてあの時と同じ声が聞こえてくる」(ホワイト)
結果はホワイトの予言にほぼ等しいものになった。
テーピングでがっちり固定された右ヒザ。
「足の1本くらいくれてやってもいい」と棚橋は思ってはいただろうが、裏足4の字固めについては、どうにか逃げ切ることはできていた。
ロングタイツに隠れて見えないが、棚橋の右ヒザはがっちりとテーピングされている。
痛々しい自分に言い聞かせるように、棚橋は気持ちを落ち着けて、最後まで冷静に戦おうとした。
なのに……不思議なイラ立ちが棚橋の冷静さを奪っていったように感じられた。それはホワイトの相手の気勢をそぐような戦い方にも関係しているようだった。
「時代は変えていくものではなく、動かしていくもの。時代を動かす!」
そんな棚橋の願いは――かなわなかった。