濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
プロレスの価値観を揺さぶる“カリスマ”
DDT王者・佐々木大輔という男。
posted2019/02/14 10:30
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
DDT Pro-Wrestling
DDTの頂点、KO-D無差別級王座を保持する佐々木大輔は、DAMNATIONというユニットを率いている。その“掟”はこうだ。
「群れない、媚びない、結婚しない」
33歳独身の佐々木、周囲から“カリスマ”と呼ばれるが、本人曰くあだ名である。“カリスマレスラー”とか“DDTのカリスマ”とか、そういったキャッチフレーズではなく、あくまであだ名。だから「カリスマ頑張って!」と応援されるし、マスコミも団体側に「今度カリスマのインタビューお願いします」とオファーしたりする。
なんだかよく分からないと思われるかもしれないが、実際のところ「そう簡単に人のこと分かったつもりになるんじゃねえ」というのが佐々木のスタンスだ。そういう男が、DDTのトップに立った。
男色ディーノを下して戴冠したのが昨年10月の両国国技館大会。来たる2月17日にも両国大会が開催され、そこでは新世代のエース、竹下幸之介を相手に防衛戦を行なう。
古典的ヒールは「リアルじゃない」。
もともと、立て続けでビッグマッチのメインを張るようになるとは思っていなかった。師匠は“レスリング・マスター”ディック東郷。佐々木もかつてはいわゆる技巧派、職人タイプを志向していたという。
だが「30歳すぎたあたりからメチャクチャやるようになった」。
基本の動きや技のクオリティは大事にしているが、イスやテーブルほか凶器公認のハードコアマッチも得意中の得意。通常の試合でも当たり前に反則をやる。
といって自分をヒールだとは思っていない。常に対戦相手や観客に睨みをきかせ、憎まれ口を叩き続ける古典的な“悪役”は、佐々木にとって「リアルじゃない」のだ。「それは仕事感、ビジネス感があるから。型をやってるだけっていう。俺は型をやりたいわけじゃない」。
では何がやりたいのか。「好き勝手にやりたい」。
たとえばそれは試合後の行動、マイクアピールにも表れる。