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2019年日本人最初の世界戦は完敗。
高橋竜也の決断は無謀だったのか?
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byKyodo News
posted2019/01/21 17:00
2019年の日本人新王者第1号にはなれなかった高橋竜平だが、世界を切り開く意志は確かに存在したのだ。
世界に目を向ける情熱を応援したい。
いくらチャンスを求めるとはいえ、決して環境のいいとは言えない(気候、日本とはまったく異なる試合運営、露骨な地元判定など)タイで勝負して世界ランキング獲得、などというプランはひと昔前なら考えられなかった。リスクは高く、実際に負けてしまう選手も多くいる。
しかし、横浜光ジムの若き石井一太郎会長のように、「国内だけでやっていても仕方がない」と海外に積極的に出ていくプロモーターが増え、「内弁慶」と言われた日本人選手もたくましくなってきた。
海外に出ていくということは、不慣れな環境で試合をして選手とスタッフが鍛えられるだけでない。現地に足を運べば自ずと人間関係もできる。石井会長はドヘニーとタワッチャイが戦ったイベントに高橋を出場させており、ドヘニー陣営とも顔見知りの仲だった。高橋の挑戦者抜擢には、このような背景もあったのだ。
結果だけ見れば、高橋の挑戦は「無謀」の一言で片づけられても仕方がない。ただし、海外でのチャレンジを厭わない横浜光ジムのような姿勢が今回の世界タイトルマッチを生み出した、とも言えるだろう。
横浜光ジムだけでなく、他にも世界に目を向ける若いプロモーターが徐々に出てきている。こうした人たちの情熱こそが、日本ボクシング界を発展させていく。そんな思いも抱いた今年初の世界戦だった。