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2019年日本人最初の世界戦は完敗。
高橋竜也の決断は無謀だったのか?
posted2019/01/21 17:00
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Kyodo News
18日(日本時間19日)、日本人選手が出場する2019年最初の世界タイトルマッチがニューヨークで行われた。マジソン・スクエア・ガーデン(MSG)のザ・シアターでゴングとなったIBF世界スーパー・バンタム級タイトルマッチは、世界初挑戦のランキング10位、高橋竜平(横浜光)がTJ・ドヘニー(アイルランド)に11回2分18秒TKO負け。自他ともに認める完敗だった。
高橋はアマチュアで豊富な実績があるわけでもなく、戦績は16勝(6KO)3敗1分で、日本ランキングは11位。日本タイトルマッチも、東洋太平洋王座にも挑戦したことがなく、世界はおろか、日本国内でもその名前は小さい。本人もニューヨークに旅立つにあたり「僕は国内で何もしていない」と認めていた。
そんな選手が日本人で初めて、過去に多くの名勝負が繰り広げられたボクシングの聖地のひとつであるMSGで世界戦のリングに立つのだから、羨望とやっかみの声が上がったとしても無理はなかった。
期待感は確かにあった。
逆から見れば、これで世界タイトルを獲得すれば、とてつもない快挙、アメリカンドリームということだ。高橋はよく動き、トリッキーで、相手にとってはやりづらい変則的なボクシングを持ち味にしている。「何かやってくれるのでは」という期待はあった。
王者に目を向けると、昨年8月、後楽園ホールで岩佐亮佑(セレス)から王座を奪ったドヘニーに難攻不落のイメージはなく、むしろ「与しやすい王者」という評価だったから、「もしや」の希望はゼロではなかったのである。
しかし、ふたを開けてみれば、本人が“高橋ワールド”と名付けたひっかきまわすボクシングは機能せず、3回にダウンを奪われ、その後は奮闘したものの、世界との距離を大いに痛感させられる敗北に終わった。