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広島・森崎和幸、引退決断の真相。
見守り続けた西岡明彦アナとの絆。
text by
石倉利英Toshihide Ishikura
photograph byToshihide Ishikura
posted2018/12/28 17:30
森崎和幸のキャリアには、いつも西岡明彦アナが寄り添っていた。
本人の意思とクラブの気持ちの間で。
西岡氏は、その後も静かに状況を見守った。夏になると和幸は練習に復帰し、徐々にコンディションを上げていったが、西岡氏は「決断の時」が迫っていることも理解していた。
「来季も現役を続けるのか、今季でやめるのか。本人には『決めるのは、いつでもいい』と言っていましたが、やめるのなら、しかるべき時期に発表して盛大に送り出したいというクラブ側の気持ちも分かります。どこかで踏ん切りをつけなければいけませんでした」
日本代表の活動でJリーグが中断期間に入っていた10月17日、西岡氏は広島に向かい、和幸と食事をしながら話し合った。
「本人は、難しいだろうと理解しつつも、ほんの少しだけ現役を続けたい思いもあるようでした。『クラブの意見も聞きたい』と」
翌18日の練習後、和幸、西岡氏、サンフレッチェの足立修強化部長の3人で話し合った。いろいろな話をした末に和幸は納得し、現役引退を決断する。
クラブから正式に発表されたのは10月27日。29日に行われた引退会見で、和幸は「僕の周りで気にかけてくれる方もたくさんいましたし、自分自身としても、できるだけ早く報告したかった。いまは本当にすっきりしています」と語った。
「19年間、本当にありがとうございました」
11月24日、引退前最後のホームゲームとなったJ1第33節の名古屋戦。今季最多の2万1997人の観客が詰めかけ、西岡氏も観戦に訪れた試合後、引退セレモニーが行われた。長いあいさつを何も見ずに話した和幸は、最後に「僕にとってサンフレッチェ広島は、人生のすべてでした。広島に生まれてきて、本当によかったです。(プロ入りしてから)19年間、本当にありがとうございました」と言った。
西岡氏は契約選手として和幸と接しながら、多くのことを学んだ。プロアスリートをマネジメントするにあたって、どのように向き合い、どんなタイミングで、何を話すのか。サポートするときに、求められるものは何か。「そういうことはすべて、カズと浩司に教えてもらった。ありがたいです」と感謝する。