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伊調馨のラスト10秒逆転劇を呼んだ
第1ピリオド、川井梨紗子の「1点」。 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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posted2018/12/25 17:00

伊調馨のラスト10秒逆転劇を呼んだ第1ピリオド、川井梨紗子の「1点」。<Number Web> photograph by AFLO

鮮やかな逆転劇を見せた伊調馨。普段はクールだが、今回の勝利の瞬間は表情を崩した。

川井の1点が分岐点に。

 最初のクライマックスは第1ピリオド終盤に訪れる。アクティビティタイムで1点を先取した川井は伊調を再びアクティビィタイムに追い込む。その最中に片足タックルを決め、そのまま伊調を場外へと追いやりさらに1点を追加した。この攻防を日本レスリング協会の西口茂樹強化本部長は見逃さなかった。

「川井は間違いなくポイントをとれるタックルを仕掛け、簡単に押し出してしまった。あと何秒か待っていたら、アクティビティタイムでもう1点もらえたのにね。あとから本人もアッと思ったかもしれない。この攻防が勝負のターニングポイントだったと思う」

 第2ピリオドの終了間際、伊調が片足タックルから一気に畳みかけるようにバックを奪った瞬間の場内の盛り上がりようといったらなかった。これぞオリンピックスポーツの醍醐味。北京オリンピックから現地でレスリングを見続けている筆者は、リオデジャネイロオリンピックのレスリング会場にタイムスリップしたような錯覚に陥った。

リオと比べるとまだ7割。

 日体大で伊調を指導する田南部力氏は試合形式がノルディック方式になった時点で「決勝でもう一度川井選手と闘うことを想定していた」と証言した。

「伊調にとっては川井選手以外の相手も世界のトップで通用する選手だったことが大きい。探りながらというのもあったけど、そうした試合を通して少しずつ体が反応していった」

 その一方で、田南部氏はリオの時と比べると筋量・パフォーマンスともにまだ7割くらいと打ち明けた。「今大会が終わったあとに強化して、6月の全日本選抜にピークを持って行ければいいと思っていた。次はもっといいレスリングができると思います」

 この階級がノルディック方式で争われなかったら、こんな結末を迎えることもなかっただろう。運も味方につけた伊調は復活の手応えを感じていた。

「梨紗子とも、ああいうふうに闘えた。オリンピックがぼんやり見えてきた」

 終わりよければすべて良し。2日間で人はこれほどまでに変われるものなのか。パワハラ問題で一時は渦中の人となった34歳のレジェンドは2020年に向け疾走し始めた。

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