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バドミントン世界1位の野心と我慢。
全日本連覇・山口茜の幅が広がった。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byItaru Chiba/AFLO
posted2018/12/21 10:30
12月2日の全日本決勝では奥原希望を2-1(21-16、17-21、21-11)で破り、2年連続3度目の優勝。
我慢することをテーマに。
メンタルの持っていき方が見えたのは団体戦後に行なわれたアジア大会女子シングルスだ。山口は団体戦のときとは打って変わった伸び伸びとしたプレーを見せて、銅メダルを獲得した。そして、すべての戦いを終えた後にこう言った。
「(シングルスでは)自分らしいプレーを出せたと思う半面、団体戦ではなぜこういうプレーをできなかったんだろうという気持ちもあります。これからまた同じような場面がたくさんあると思うので、この経験を無駄にしないようにやっていきたいです」
少しずつ経験を身につけてきた山口が、さらに次の一歩を踏み出そうと新たなチャレンジを試みたのが、11月下旬から12月にかけて行なわれた全日本総合選手権である。
展開の中で意表を突く攻めを見せることが得意な山口がテーマとして心掛けたのは「我慢」だった。
「最近特になんですけど、ナショナルコーチからもチームのコーチングスタッフからも言われるのが『もっと大きく展開してほしい』だったり、『自分から行き過ぎている』というアドバイスです」
奥原との決勝で実を結んだ。
プレッシャーや緊張感の中でやってみないとものにならないという決意で、連覇の懸かった全日本総合選手権という舞台をあえてチャレンジの場とした。大舞台だからこそ試す価値があったのだ。そして、テーマに据えた「我慢」が実を結んだのが奥原希望との決勝戦だった。
「飛ばないコートだった」という第1ゲームは、攻めたいとはやる気持ちを抑えて長いラリーに持ち込んだ。すると、粘りが身上の奥原が先にミスをし、山口がポイントを重ねた。第2ゲームの終盤は集中力が乱れて連続失点して落としたが、集中し直した第3ゲームを取り返し、見事に連覇を飾った。
「これまで奥原さんに対しては、長いラリーに我慢できず、攻めたくなったところを利用されたり、ミスしてしまうことが多かったんですが、今回は大会のテーマである『我慢』ができたと思います」