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バドミントン世界1位の野心と我慢。
全日本連覇・山口茜の幅が広がった。
posted2018/12/21 10:30
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Itaru Chiba/AFLO
桃田賢斗の世界選手権男子シングルス優勝や、女子ダブルス勢の世界ランキングトップ3独占など、2018年のスポーツシーンを賑わせたバドミントンにおいて、忘れてはならない金字塔がある。
2018年4月19日、男女を通じて日本のシングルス勢で初の世界ランキング1位選手となったのが、山口茜(再春館製薬所)だ。
15歳だった12年に史上最年少で日本代表入りを果たして以来、つねに「楽しむ気持ち」をフロントローに据えながら前進し続けてきた彼女にとって、「世界1位」は意外とも言えるほど野心的な目標だった。
「世界ランク1位を体験したい」
'17年12月にスーパーシリーズファイナルというビッグタイトルを獲得した直後、18年の目標を聞かれ、山口は言った。
「今、一番関心があるのは世界ランキング。1週間でもいいから世界ランキング1位を体験したいです」
当時の山口の世界ランキングは2位で、1位を目標とすることは当然と言えた。ただ、経験ではなく体験と表現するあたりに彼女らしい無欲さもにじみ出ていた。関心があるのはなぜかという質問に対し、山口はこう説明した。
「世界ランキングを上げるにはコンスタントに上位に入っていかないと難しい。そういう意味では1回の大会で優勝するより難しいと思うので、挑戦してみたいという気持ちがあります」
難関のターゲットを手中にしたのはそれから4カ月後。現最強選手である戴資穎(タイ・ツーイン)をかわして、2週間にわたって世界1位を経験した。だが、実際にその座についてみると、特別な発見はなかったという。