オリンピックへの道BACK NUMBER
高橋大輔が全日本の舞台に帰還。
氷上で常に明るく、希望を持って。
posted2018/12/19 17:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
その日は、1日、1日と近づいている。
2013年12月以来、5年ぶりに、高橋大輔が大舞台の氷上に立つ瞬間は目の前に迫っている。
7月1日の現役復帰からは、長いようで、今になってみると、瞬く間に過ぎた。
再びの現役生活は、しかし、2014年に引退する前とは異なった彩りを帯びている。それは折々の言葉や表情が示していた。
近畿選手権で感じたブランク。
復帰後、最初の大会となったのは10月の近畿選手権だった。披露した新しいプログラムは、ショートが『The Sheltering Sky』、フリーは『Pale Green Ghosts』。
ショートは冒頭のトリプルアクセルをはじめ、3つのジャンプすべてに着氷、首位に立った。一方のフリーはジャンプが思うように決まらず、結果、総合3位で復帰戦を終えることになった。
「最低ですね。今まで練習でも、ここまでぼろぼろだったことはなかったので」
「1つの試合をこなすというのは、精神力や体力といったいろいろな要素をたくさん使うと、あらためて感じました」
ブランクの大きさを実感したが、笑顔だった。文字では表現しきれない明るさが言葉にはあった。
11月には2戦目となる西日本選手権に臨む。
この大会で高橋は、近畿選手権から過ごした時間の密度と充実ぶりを思わせる演技を披露する。ショート、フリーともに精度を高めた滑りで初戦より大幅に得点を伸ばし、優勝を果たしたのである。