オリンピックへの道BACK NUMBER
高橋大輔が全日本の舞台に帰還。
氷上で常に明るく、希望を持って。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2018/12/19 17:00
高橋大輔の復帰戦となった近畿選手権、3位に終わったが演技後には朗らかな表情を見せていた。
反省や課題を口にする明るさ。
試合後、手ごたえを得られた趣旨の言葉を口にした一方で、反省や課題に触れることも少なくなかった。
「とりあえず大きなミスなく終えたことはよかったと思うんですけど、全体的にステップやスピンの質がよくなかったと思うので、そういった部分は課題になったな、と」
「(心と身体は?)ぜんぜん楽じゃなくて、気持ちの部分、メンタルではすごくいい状態で過ごせているけれど、それに身体がついていかない。やっぱり追い込んだりすると怪我をしたり。4年のブランク、蓄積、積み上げがないですね。予想通りというか」
そこにもまた、文字には表れない明るさがあった。
かつての重責と違うもの。
大会の出来事ばかりではない。
関西大学のリンクでは、どこまでも真剣な眼差しで滑り、ジャンプに挑んで、続けて転倒することもあった。
それでもリンクサイドにいるコーチたちと言葉を交わす表情はどこまでも明るかった。
復帰表明から近畿選手権に至るまで、順調だったわけではない。周囲も目を見張るほど調子を上げたタイミングで怪我に襲われ、しばらく練習ができない時期があった。靴がうまく合わないことに悩まされもした。
それでも失われることのない、練習や試合後の明るさ。それが浮かぶのはおそらく、競技の場でフィギュアスケートを滑ることの充実感であり、楽しさだった。フィギュアスケートがしたくてたまらないかのような、あふれる思いだった。
かつて、重責を担い、怪我にあっても周囲の期待に応えようと懸命だった頃にはなかった表情やしぐさだ。それが復帰後の高橋にはある。
振り返れば、復帰表明時の会見で、高橋はこう語っていた。
「これまでは勝てないんだったら現役をやるべきではないと思っていたのですが、それぞれの思いの中で戦うというのもいいんじゃないかと思いました」