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王者は王者を知る。最後のアロンソに
ハミルトンとベッテルが示した敬意。
posted2018/12/02 09:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
AFLO
いままで見たことがない光景だった。
'18年のF1最終戦アブダビGPのレース直後、11位でフィニッシュしたドライバーを、優勝者と2位のドライバーが讃えながらホームストレートまでエスコートし、3台がそろってドーナツターン。
アブダビGPで優勝したルイス・ハミルトンと2位のセバスチャン・ベッテルとともに、総立ちになった観衆の前で、華麗にドーナツターンを演じたのは、この日がもしかしたら最後のF1になるかもしれないフェルナンド・アロンソだった。
その光景にこみ上げてくるものを感じつつ、同時に複雑な感情が入り混じっていた理由は、じつはアロンソはまだ正式にF1からの引退を表明していないからだ。
アロンソが次に狙う偉業とは?
アロンソがF1から離れることを発表したのは、今年の8月。その発表は「'19年はF1でレースはしない」という内容だった。したがって、'20年以降にアロンソがF1に復帰する可能性がない訳ではない。だが、すでにF1で数々の成功を収めてきたアロンソが復帰したいと思うだけの目標が2年後に残っているかと言われれば、うなずくのは簡単ではない。
「F1ドライバーになって、グランプリに勝ち、チャンピオンにもなった。ルノーでチャンピオンになった後、マクラーレンやフェラーリというトップチームでも走った――F1で夢見たことの全てを僕はやり遂げた。もう37歳だし、F1以外で残されているチャレンジをやりたいんだ」
アロンソに残されたチャレンジ。
それは、F1モナコGP、ル・マン24時間レース、インディアナポリス500マイルレースという世界三大レースを制して、トリプルクラウンを達成するという夢だ。