フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
全治3週間負傷でも優勝の羽生結弦。
ザギトワも優勝で五輪覇者の貫禄。
posted2018/11/19 17:00
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Asami Enomoto
11月15日からモスクワで開催されたGPシリーズ第5戦、ロステレコム杯は羽生結弦とアリーナ・ザギトワがいずれも2位を大きく引き離して優勝。2人の平昌オリンピックのチャンピオンたちが、その実力をはっきりと誇示する結果になった。
羽生結弦はSP『秋によせて』で完璧な滑りを見せた。
冒頭の4サルコウ、3アクセル、そして後半に入った4+3トウループを難なくきめて、全てのスピンとステップシークエンスをレベル4でそろえた。音楽の盛り上がりにのった後半は特に圧巻で、5コンポーネンツでは、パフォーマンス、構成、音楽の解釈の3部門で10点満点を出したジャッジが何人かいた。110.53は、GPヘルシンキ大会で自らが出した今シーズン世界最高スコア106.69を上回る、世界新である。
これまでどれほど素晴らしい演技を見せても、自己評価は厳しかった羽生だったが、今回の演技では嬉しさを率直に表現し、冒頭のサルコウについても、
「自分でも納得できるような、トランジション(エレメンツ間のつなぎ)へつなげられたので、すごく満足しています」と語った。
練習で負傷も、そのままフリーへ……。
だが翌日フリーの日の朝の公式練習で、思わぬ事故が起きた。4ループの着氷で転倒し、古傷のある右足首を再び負傷したのである。
数秒氷の上にうずくまり、立ち上がるとゆっくりと氷を何周か回ってからまだ音楽のかかっているリンクを後にした。昨シーズンのNHK杯での公式練習で、オリンピック出場が危ぶまれたほどの怪我をおった羽生だけに、注意深く自分の身体の反応を見ているように見受けられた。
それでも本番では、ジャンプの構成を変えて、フリーに挑んだ。
敬愛するエフゲニー・プルシェンコへのトリビュートとして作った『Origin』の冒頭は、4ループではなく4サルコウから開始。続いた4トウループも、ため息が出るほど軽々と決めた。