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アルジェリアサッカー界の腐敗。
八百長を国中が知っている異常さ。
text by
フィリップ・オクレールPhilippe Auclair
photograph byBernard Papon
posted2018/11/18 10:00
アルジェリアの八百長で驚くべきは、そのことを選手もファンも協会関係者も全員知っているということだ。
貧しいレフリーに断る理由はない。
レフリーもかろうじて生活していける程度の報酬しか支給されていない。
FIFAに登録された国際審判も状況は同じで、月収が700ユーロ(約9万円)を越えることはあり得ない。そうした状況では、彼らがハレドのオファーに耳を傾けても何の驚きもない。
あるレフリーが、不正に加担するに至った経緯を語った。
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「長年にわたり不正から距離を保ち続けてきたが、それが私のキャリアのプラスには何もならなかった。八百長への道が開かれたのは、レフリーとしての私の役割が広がったことを意味している」
彼らの中には不正から多大な恩恵を受けているものも少なくない。
アルジェリアのテレビ局が明らかにしたように、高級車を乗り回し別荘を手に入れたうえに海外不動産まで買い漁っているレフリーもいたのだった。
八百長の公的価格まで存在する。
不正のプロセスはとてもスムーズである。
すべての取引は《仲介人》を介して行われ、選手もレフリーもクラブ会長も、特定の《仲介人》と深く結びついている。
例えばリーグ中位に位置し降格の心配がないクラブが降格の危機に直面するクラブと対戦する場合、勝利の値段はどちらにも信頼された馴染みの者の手に委ねられる。
ハレドが説明する。
「少なくとも3人の選手を確保したら(会長の代理人と)話し合いをする。彼らは疑心暗鬼だ。金を受け取る側は本当にもらえるのかどうか不安だし、支払う側もそれで本当に結果が得られるかどうか確信が持てない。問題が起きたからといって、誰も裁判に訴えることができないからね」
にわかには信じがたいが、八百長の公的価格が存在する。
この10年というもの、試合の重要度と状況に応じて価格が定められている。例えば1部リーグにおけるアウェー戦勝利は5万8500ユーロ(約750万円)であり、2部リーグでシーズン終盤のアウェーゲームに引き分けようとすれば、最低7000ユーロ(約900万円)からの交渉になる。シーズン序盤のほぼ倍額である。
この金額は複数の情報源が証言しているばかりか、一般にも広く知られておりファンもSNSでオープンに話題にしている。