フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
紀平梨花が日本人初の偉業を。
3アクセルでシニアGP初戦に優勝。
posted2018/11/14 16:30
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Asami Enomoto
NHK杯女子は、史上に残るレベルの高い戦いだった。
SPでトップに立ったのは、2015年世界女王、ロシアのエリザベータ・トゥクタミシェワ。2011年の秋、14歳でセンセーショナルなシニアGPデビューを果たした彼女も、いまやすっかりベテランの風格である。
2014-15年のシーズン、GPファイナル、欧州選手権、世界選手権と大きなタイトルを手にして無敵に見えた彼女だったが、その後ジャンプが安定しなくなり2018年平昌オリンピックの代表入りも逃した。だが今シーズン、スケートカナダで優勝してみごとに表彰台に返り咲いた。NHK杯でのSP『アサッシンのタンゴ』では、カナダに続いて3アクセルを成功させて76.17を獲得した。
2位は『小雀に捧げる歌』で、傷ひとつない演技を見せた宮原知子だった。3ルッツ+3トウループなどジャンプをきれいに成功させ、指先まで神経の行き届いたパフォーマンスで76.08を獲得。トゥクタミシェワに0.09という僅差だった。ここでのトップ2人が出したスコアは、今シーズンのGPシリーズ女子では1位と2位という高さだった。
SP3位は、ミュージカル映画のサントラ『イッツ・マジック』で滑った三原舞依。3ルッツ+3トウループの2つ目のジャンプが回転不足の判定を受けたほかはノーミスの演技で、70.38を獲得した。
日本初! 紀平がシニアGPデビュー優勝。
だがフリーでみごとな逆転優勝を果たしたのは、16歳の紀平梨花となった。
SPでは3アクセルの転倒で5位スタートだった彼女だが、フリー『Beautiful Storm』では冒頭で完璧な3アクセル+3トウループ、そして単発の3アクセルを成功。2度の3ルッツを含む6種類の3回転ジャンプを合計8回、クリーンに降りた。
紀平は今シーズンのオンドレイ・ネペラ杯でもフリーで3アクセルを2度成功させ、2010年バンクーバーオリンピックの浅田真央以来の記録を作った。
だがNHK杯フリーで秀逸だったのは、ジャンプだけではない。
身体全体を伸び伸びと使った表現は、思わず見ていて引き込まれる気迫に満ちていた。すべてのエレメンツでプラスのGOEを得て、154.72を獲得。総合224.31で逆転優勝をきめた。
日本の選手がシニアGPデビュー戦で優勝をきめたのは、今回の紀平が初である。
「今回の演技で満足せず、ショートプログラムとフリーの両方をミスなく完璧にやることを目指したい。どんな相手がきても自分に勝つことが大事だと思う」と、初の大きな舞台での勝利に浮かれることもなく、すでに次への抱負を口にした。