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坂本花織は思い切り泣き、笑った。
GPファイナルへ「待つだけ」。
posted2018/11/10 11:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
思い切り泣いて、思いっ切り、笑った。
フィギュアスケート・グランプリ(GP)シリーズ第3戦、フィンランド大会(ヘルシンキ)。自身、今シーズン2試合目のGPとなった坂本花織は、3位で表彰台に上がった。それはどこかほろ苦さと、でもそれを上回る喜びももたらした試合となった。
坂本はGP初戦のスケートアメリカを、好スタートと言ってよい内容と結果で終えていた。ショートプログラム、フリーともにノーミス、総合得点213.90を記録。宮原知子に次ぐ2位につけたのだ。今シーズンの目標の1つとしてきたGPファイナル進出へ向けて、十分な手ごたえを得た大会でもあった。
しかし迎えたヘルシンキ大会は、思わぬ出だしとなった。
トリプルフリップでの転倒。
ショートの冒頭で予定していたのは3回転-3回転のコンビネーションジャンプ。その1つ目、トリプルフリップで転倒してしまう。
そして最後のジャンプ、トリプルループに、最初の失敗のリカバリーのためトリプルトウループをつけようとしたがまたしても転倒。結果、7位にとどまることになったのだ。
原因は、公式練習の際、ステップでレベル4を獲得しようとするあまり、ステップに集中が向かってしまったためだった。
「そのためにジャンプのことが、(頭から)抜けてしまったんだと思います」
悔やんでも悔やみきれなかった。それは演技の直後から涙が止まらなかったことからも明らかだ。同時に坂本の失敗は、些細なメンタル面の動きも演技に表れてしまう、フィギュアスケートの繊細さをも示している。
だが、坂本はそのままでは終わらなかった。