フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
カナダで邂逅した2人の女王と新星。
山下真瑚という日本の新ヒロインも。
posted2018/10/31 16:30
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Akiko Tamura
フィギュアスケートのGPシリーズ第2戦、10月26日からモントリオール郊外のラバルで行われたスケートカナダでは、2人の元世界女王が表彰台に上がった。
サプライズの優勝を果たしたのは、ロシアのエリザベータ・トゥクタミシェワだった。まだ14歳だった彼女がこの大会に初出場し、優勝したのは2011年。ちょうど7年前のことである。
2度の五輪を逃したトゥクタミシェワ。
「当時はこの大会がそれほど大きなものだとも思っていなかったし、気楽に構えていました。全てうまくいって、気がついたら勝っていたという感じだったんです」
会見でそう語ったトゥクタミシェワ。まだ怖いもの知らずだった14歳の彼女にとって、さほど苦労もなく手にしたタイトルだった。
「でもあれから、調子が上がったり下がったり波があって私のスケートキャリアは楽ではありませんでした」
代表入りを逃した2014年ソチオリンピックでは、彼女の最大のライバルだったアデリナ・ソトニコワが金メダルを獲得。その翌シーズン、トゥクタミシェワは劇的なカムバックを遂げて欧州選手権、GPファイナル、世界選手権のすべてで優勝した。世界選手権のSPでは3アクセルも成功させ、圧巻の強さを見せた。だがこの絶好調は1シーズンで終わってしまう。翌年から再びジャンプが安定しなくなり、2018年平昌オリンピック代表入りも逃したのだった。
新たな空気に刺激されて……。
「オリンピックに出られなかった悔しさをモチベーションにしている、という訳ではないんです」
会見で、オリンピックの翌シーズンに調子が上がるのは代表入りを逃したことが刺激になっているのかと聞かれると、ちょっと苦笑してこう答えた。
「ただオリンピックの次のシーズンはルールも変わってちょっと空気が一新。新しいシーズンがはじまるという雰囲気がある。それがやる気を刺激してくれるのかもしれません」
SPでは3アクセルをきれいに着氷し、ノーミスの演技でトップに立った。
3アクセルの練習を再開したのは今年の5月で、1週間の休暇を取った後に調子が良くなったのだという。フリーでは冒頭の3アクセルで転倒したものの持ち直し、残りをまとめてトップを保った。GPタイトルは世界女王になった2014/2015年シーズン以来、4季ぶりのことだ。
「今日のフリーは最初に転倒してしまって、良い滑りではなかったです。緊張しました。それでも優勝できたのは嬉しいです」いつの間にか流ちょうな英語を話すようになったトゥクタミシェワは、落ち着いた笑顔でそう語った。