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39歳ライコネン、F1勝利の大偉業。
激動を生き抜いたクールな適応力。
posted2018/10/31 07:30
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
歴史に刻まれる偉大な勝利だった。第18戦アメリカGPでの、キミ・ライコネンの優勝だ。
まず、その年齢だ。アメリカGPが開幕する直前の10月17日に誕生日を迎えたライコネンは、39歳4日でアメリカGPを制した。
これは歴代の最年長優勝記録では13位だが、ライコネンを上回る年長者のほとんどが、F1黎明期の1950年代に記録したもの。当時のF1ドライバーは40代、50代というのが当たり前の時代。
20代のドライバーが全盛となった近年のF1に限れば、ナイジェル・マンセルの41歳97日('94年最終戦オーストラリアGP)、カルロス・ロイテマンの39歳35日('81年第5戦ベルギーGP)に次ぐ記録だ。
今回のライコネンの優勝は、最年少でF1にデビューした21歳のマックス・フェルスタッペンに競り勝ったという点でも価値のある勝利だった。ライコネンは来季ザウバーへ移籍し、そのザウバーから入れ替わるようにしてフェラーリに移籍するシャルル・ルクレールは、フェルスタッペンと同じ21歳。シートを交換した来年の2人の活躍にも注目したい。
最長ブランクの113戦ぶり勝利。
ライコネンの今回の記録には、もうひとつ重要な価値があった。それは'13年の開幕戦オーストラリアGP以来、113戦ぶりの優勝だったという点だ。これはリカルド・パトレーゼが持つ歴代最長ブランク優勝となる99戦を抜いて最長記録となった。
この記録はライコネンが単に長いキャリアをF1で重ねているベテランというだけでなく、勝てるチームから長い間、高く評価され続けているトップドライバーである証左でもある。
しかも、ライコネンがレースをしてきた時代というのは、レギュレーションが大きく変動してきた激動の時代だった。