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村田諒太、夢のラスベガスで散る。
今後は「ゆっくり考えればいい」。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byAFLO
posted2018/10/22 17:00
村田諒太が世界王者であることを当然と思い始めていたが、ミドル級はやはり怪物たちの棲む場所だった。
「ただやればいいという選手ではない」
並みの精神力ではとても耐えられそうにない状況の中、日本で調整している村田は、少なくとも我々の前ではいつもの明るい村田だった。プレッシャーについて問うと、「エンダム第2戦のときのプレッシャーに比べれば」と答えたものだった。
昨年5月、初の世界タイトルマッチとなったエンダムとの第1戦では、優勢と見られながらも判定負け。エンダム勝利につけたジャッジが処分されるなどの騒動をへて実現した10月の再戦では、尋常ではないプレッシャーを体験したという。それを乗り越えた経験は村田に確かな自信を与えたはずだったが、今回の結果には直接結びつかなかった。
これで村田は2敗目。エンダムとの第1戦では、敗れはしたものの採点が議論を呼び、「不可解な判定による不運な敗北」は再戦という物語の導入となった。しかし、今回の敗北はそれとは違い、描いていたストーリーは完全に白紙に戻ったと言わざるを得ない。
今後について、本田会長は次のように語っている。
「村田は背負うものが大きすぎて、ただ(現役を)やればいいという選手ではない。ゆっくりと考えればいい」