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高木菜那&美帆が語った平昌の後。
勝気な姉と真面目な妹の心模様。 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byKyodo News

posted2018/10/14 17:00

高木菜那&美帆が語った平昌の後。勝気な姉と真面目な妹の心模様。<Number Web> photograph by Kyodo News

10月2日の長野エムウェーブでの公開練習では、1周32秒以内の高速滑走を力尽きるまで続ける激しい練習を行なった。

勝気な菜那、少し物憂げな美帆。

 もちろん、その中でも、10月下旬の全日本距離別選手権では3000mと1500mで上位に入り、ワールドカップ出場権を手に入れることをターゲットとしている。

「去年まではチームパシュートとマススタートにかけていましたが、今シーズンは個人種目も頑張りたいという気持ちがあります。この2種目は落としたくないですね」

 勝ち気な菜那の心の強さが言葉ににじみ出ていた。

「ずっと悩んでいたのかな」

 ときおり物憂げな表情をのぞかせながら、美帆が語り始めた。

「夏場のトレーニング期は、エンジンがかかってこない、モチベーションが上がってこないと感じて、いつもと違うなと思っていた部分はありました」

 それでも練習量はこなしていたが、いざ氷に乗ってみると、体は正直だった。滑りの感覚が想像していた以上に良くなかったというのだ。「ヨハン(デビットコーチ)が組んでいる練習に、自分自身で意味や質をプラスするのが大事なんだなと気づきました」

デビットコーチに相談したことも。

 けれども、美帆は今のこのメンタル状態が、全面的にマイナスであるとは考えていない。裏を返せば、それだけ平昌五輪ですべてを出し切れたということだからだろう。

 そのうえで、「今だから感じるものに、大切に向き合っていきたいなというようにも思っているんです」と言う。

「スケート界で見ると、ここまで引きずってるのは自分だけなのかな(笑)。そう思うほどなので、それが焦りにつながっている部分もあると思います。でも、焦っても、エンジンが掛からないのはしょうがない。今は、また走り出したいと思った時にいいスタートを切れるように準備していこうと思ってやっています」

 モチベーションが上がらないことについては、正直にデビットコーチに相談したという。

「そんなものだよ、とは言われるんですけどね。でも、自分としては何か、そうあってはいけないというような先入観がある。それが葛藤になっているという感じですかね」

 まっすぐで真面目な美帆の、等身大の心模様である。

【次ページ】 メンタル的なことから逃げずに。

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