競馬PRESSBACK NUMBER
武豊、4000勝達成から凱旋門賞へ。
「挑戦、勝つ事がモチベーション」
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2018/10/05 16:00
凱旋門賞へ向け、最終追い切りを行ったクリンチャーを見届ける武豊騎手(中央)と宮本博調教師(右)。
フォワ賞は実績のある相手揃い。
フォワ賞はクリンチャーを含め6頭立てで行われた。日本の競馬を見慣れたファンにとっては、少頭数に驚いた人もいたのではないだろうか。しかし、出走登録料の高いヨーロッパの競馬では、良い馬、強いと思われる馬の出て来るレースが少頭数になる事は珍しくない。
高い登録料を支払ってまで勝ち目のない馬を走らせる酔狂なオーナーは滅多にいないのは道理だろう。この時のフォワ賞も同様。6頭立てといえ、実績のあるメンバーが揃った。
昨年の凱旋門賞で2着だったクロスオブスターズ、同ブリーダーズCターフの勝ち馬タリスマニック、同アイルランドダービー馬のカプリにGI・サンクルー大賞など重賞を3連勝中のヴァルトガイスト……。日本ではGI勝ちのないクリンチャーは、実績だけなら格下というメンバー構成。
「武さんからは『もしかしたら逃げる形になるかもしれないけど良いですか?』と事前に言われていました。乗り方に関しては私から口出しするような事はなく、武さんにお任せしていますので『良いですよ』と返事をしました」
「芝自体は気にせず走れていた」
宮本師がそう語るように、ゲートが開くとクリンチャーはハナを奪った。
「スローで上がりの速い競馬は、この馬にとって向いた流れではありませんから……」
鞍上はこの作戦に出た理由をそう語った。実際、中盤には自らラップを上げるべく動いた。しかし──。
名手の思惑以上にヴァルトガイストの脚が切れた。クリンチャーが途中からペースを上げていったにも関わらず、ヴァルトガイストが強烈な瞬発力を披露した事で、レースの上がり3ハロンは33秒台。切れ味よりスタミナに優るクリンチャーには厳しい形となった。そして、最後は鞍上が無理をせず流した事もあり、6着に沈んだ。
「結果は残念だったけど、芝自体は気にせず走れていたし、収穫はありました」
苦戦に終わった結果にも、武豊騎手は前を向いてそう語った。
一方、宮本師は残念そうな表情を隠す事無く、次のように口を開いた。
「周囲からは『太く見えた』と言われました。自分なりにはパドックでも良い感じに仕上がったと見えたけど、結果が結果なので、皆さんの意見を真摯に受け止め、本番ではもっとしっかりと仕上げて行きたいと考えています」